文化大革命さなかの1970年代初めの中国。農村に派遣された高校生ジンチュウ(チョウ・ドンユイ)は、闊達な青年スン(ショーン・ドウ)と知りあう。両親が反革命分子として迫害され、身を縮めて暮らしているジンチュウに、スンは自分の思いを素朴に率直に伝えてくる。彼から差し伸べられる手を、彼女はおずおずとつかむようになる。
二人の恋がめばえ、形を成し、笑顔が弾けるようになると、あまりの美しさに泣けてくる。生き生きとして、初々しくて、この恋がまっとうに実ることなどないだろうと思えてくるからだ。その予感どおり、二人の恋は“ある病”によって阻まれることになるが、いわゆる“難病映画”にありがちなべたついた展開にならないところが、この映画の優れたところだ。

懐かしい写真を見ているうちに、その写真が静かに動き出す、といったかんじの淡々とした描写が、はかない恋と残酷な事実をまっすぐに伝えてくる。“ある病”の原因を深く追及することはないが、それがかえって底に秘められた強い怒りを感じさせる。
スンとの別れがどんなに辛くても、ジンチュウは奥歯を噛みしめて生きていくだろう。彼とのいくつもの思い出が彼女のこれからをつくっていく。そして、生きることは誰にとってもそういうことだと思うとき、この映画の普遍性に気づく。百年経っても古びない凛とした映画である。(内海陽子)
サンザシの樹の下で
7/9(土)新宿ピカデリー他全国順次ロードショー!
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