『ハングオーバー!!史上最悪の二日酔い、国境を越える』の前作、『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』は、R指定コメディとしては史上空前の大ヒット作。コメディ作品でそれ以上のヒットとなったのは、『ホーム・アローン』、『ミート・ザ・ペアレンツ2』のみだ。
続編の『ハングオーバー2』も6月30日現在、全米年間興行収入の1位を突っ走るほどの大ヒット。なぜ『ハングオーバー』シリーズはここまで人気があるのだろうか?
朝目覚めると、信じがたい状況が広がっている。どうしてこうなったのか全く理解できない。一作目では、めちゃくちゃになったホテルの部屋に猛獣がいる。赤ちゃんがいる。歯が一本抜けている。二作目の状況は悪化。場所も違うし、恐ろしげな状況はエスカレートしている。
こんな状況は、どこかで聞いたことがないだろうか? 『ソウ』シリーズや、『CUBE』のような、いわゆるシチュエーション・スリラーのストーリー展開に極似なのだ。でも、『ハングオーバー』は、コメディ。
ホラーもコメディも、感情を揺さぶるという意味では同じ。同じシチュエーションがあってもいい。『ハングオーバー』シリーズは、ホラーをコメディに転換した作品の大成功例だろう。恐怖状況から始まる、なんでもありの笑いのツボが面白くてたまらない
前の晩から起きたことを探ると同時に、仲間の一人の行方を捜すというストーリーは、二作目も同じ。台風の目でお笑い担当のアラン(ザック・ガリフィナーキス)、一般人代表のような歯科医師ステュ(エド・ヘルムズ)、どこか超越しているリーダー格フィル(ブラッドリー・クーパー)。メイン登場人物3人の人間関係のおかしさと深さに泣かされたりもする。
さまざまな体験から、一般人代表ステュは、今まで知りもしなかった隠された自分の奥底に目覚める。一種のヒーローズ・ジャーニーだ。シチュエーションはホラー風味、テーマは王道。そこに『ハングオーバー』シリーズの成功の秘密があるのだろう。
私が心に残ったのは、信じがたい状況に固まってしまうステュにフィルが言うせりふ、「忘れるんだ」。嫌な思い出にがんじがらめになっていたら前に進めない。過去を振り切って現在に集中しろ。まるでフィルは老師のようではないか。このヒットを受けて、続編の3作目も必ず製作されるだろう。彼らのヒーローズ・ジャーニーの次の旅路の行方が楽しみでたまらない。
(オライカート昌子)
・2011年7月1日(金)、丸の内ピカデリー他 全国ロードショー
・『ハングオーバー!!史上最悪の二日酔い、国境を越える』
オフィシャルサイト http://wwws.warnerbros.co.jp/thehangover2/