スティーヴン・スピルバーグ監督の『ブリッジ・オブ・スパイ』には、感動させられた。それ以上に感嘆してしまった。今年になって、まだ映画を見ていないなら、最初に選ぶ映画として、ぜひおすすめしたい。
1957年、東西冷戦のさなか、ニューヨークで一人の男が逮捕される。キャンバスを片手に川のほとりへ赴き、毎日絵を描いていた中年の男、ルドルフ・アベルだ。彼はソ連のスパイとされ、処刑されるのは確定的だった。
保険専門の弁護士、ジェームズ・ドノヴァンがアベルの弁護をするように指名される。ジェームズは気が進まないものの、人道的な立場から、弁護を引き受けることになる。彼には、ルドルフ・アベルを死刑から救うための秘策があった。そのアイデアはうまくいったものの、ジェームズ・ドノヴァンには、さらに危険な任務が与えられる。ベルリンに行き、孤独な戦いに直面しなくてはならない。
数々の伏線の展開と終結は見事で、好奇心を刺激し続ける。 例えば、ジェームズ・ドノヴァン弁護士が、最初に登場するシーンだ。彼の専門は保険なので、交通事故事案の説明をしている。普通はただの会話だと思うだろうが、この会話の効果は、後々利いてくる。
せりふ、タイトル、シーン、伏線、ユーモア、演技などあらゆる要素が、クライマックスに向けて最大限のインパクトを上げるように配置されていて、当然クライマックスは、大盛り上がりだ。誤解の余地のない、わかりやすい映画となっていて、そのシンプルさこそ、一番の魅力だ。
スティーヴン・スピルバーグ監督というと、どうもヒューマンニズム的映画が多いイメージがあった。今回は、脚本を担当するコーエン兄弟の持ち味がプラスされ、それが、映画の出来を大きく左右していると思う。ヒューマニズムと、ブラックなリアル感のブレンドは、極めて美味しい。 (オライカート昌子)
ブリッジ・オブ・スパイ
監督:スティーヴン・スピルバーグ、脚本:ジョエル&イーサン・コーエン/出演:トム・ハンクス
2016年1月8日(金)スカラ座他全国ロードショー
公式サイト
http://www.foxmovies-jp.com/bridgeofspy/