『ラ・カリファ』映画レビュー

音楽と美が与える影響力
ロミー・シュナイダーを知っているだろうか? 光をたたえる瞳の美しさと、自信と圧倒的な存在感は、まさに”女帝”。

今回、エンニオ・モリコーネ特選上映で、国内初上映となった『ラ・カリファ』を、日本語訳すると、”女帝”となる。ロミー・シュナイダー演じる女性は、女帝のような威厳と美しさで周囲を圧倒していく。

『ラ・カリファ』の舞台は、1970年代のイタリア。工場のある町。労働者たちは、経営者のドベルドに対抗し、工場を占拠しストライキをしている。普通だったら、経営者は悪徳なイメージがある。だが、『ラ・カリファ』では違う。

経営者ドベルドの人間性が、素晴らしい。また、ドベルドを演じるウーゴ・トニャッツィから目が離せない。ドベルドは、労働者たちとの対話を大事にしている。周囲に危ないからやめろと言われても、前に出ていき、人対人の対応をしていく。

ラ・カリファこと、ロミーが演じる女性は、そんなドベルドの車の前に立ちはだかる。ドベルドは、その場では非情だ。彼女が立ち塞がろうと、気にせず車を発車。あわやというところで彼女は衝突を避けるが、車にツバを吐く。

映画『ラ・カリファ』では、そんな二人の関係が変化していく過程をじっくりと見せてくれる。社会派かつ恋愛模様が、メインストーリーだが、二人の芯の強さと純粋性が、強く訴えてくる。

だが、映画『ラ・カリファ』の見どころは別にもある。なんといっても、エンニオ・モリコーネ作曲の多数ある映画音楽の中でも有名で、美しいのが『ラ・カリファ』だ。

日本では映画は未公開だったものの、音楽はテレビの主題曲に使われたこともあるという。YOUTUBEでも、『ラ・カリファ』というと、音楽がヒットする。

『ラ・カリファ』は、有名な主題曲以外も、鳥肌モノの音楽が流れ続ける。感情を揺さぶり、情熱を掻き立てられる音楽だ。

リュック・ベッソン監督の映画『DOGMAN ドッグマン』では、主人公ダグラスが、エディット・ピアフの曲を歌うシーンが印象的で、映画の質を高めていた。音楽が映画の、そして日常の美に、いかに大きな影響を与えるのか再認識させられた。そして、それは『ラ・カリファ』でも同じだ。

そのつながりとは無関係だけれど、『ラ・カリファ』で再会できたロミー・シュナイダーの姿は、美しく力強い。いまだに人々の心に、火をつけ続けるエディット・ピアフの人生とも重なって見える。

(オライカート昌子)

ラ・カリファ
4/19(金)より新宿武蔵野館ほかで公開
監督・脚本:アルベルト・ベヴィラクア
撮影:ロベルト・ジェラルディ
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:ロミー・シュナイダー、ウーゴ・トニャッツィ、
マリーナ・ベルティ、マッシモ・ファネッリ、ロベルト・ビサッコ

1971年度カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品
1971年度デヴィッド・ディ・ドナテッロ賞主演男優賞受賞(ウーゴ・トニャッツィ)
1970年/イタリア・フランス/ドラマ/原題:LA CALIFFA/91分/
カラー/ビスタサイズ/DCP/イタリア語モノラル
©1970 RTI