現実が虚構を凌駕した2011年。不確かな運命の危うさの中で、凄絶な人の死と強靭な人の生を真摯に追究し、そうして手探りながらも逞しく明日への希望を繋ぐ人々を描いた作品に、例年以上に心魅かれたと再確認せざるを得ない10作品の選出となった。
2011年ベストムービー10位から6位
7位 やがて来たる者へ公開中!
・『やがて来たる者へ』公式サイト
6位 灼熱の魂 公開中!
・『灼熱の魂』公式サイト
2011年ベストムービー5位から1位
5位 ミラル
和平を希うパレスチナ女性たちの、儚くも凛とした大輪の花のごとき美しさ。若さゆえの正義感で暴走したミラルが目の当たりにする人種を超えた愛の穏やかな幸福。無知が生む暴力ではなく、他者を理解する知性が、紛争の絶えぬ世に調和の種を蒔く。それを育むのは、私たちだ。
・『ミラル』公式サイト
4位 トゥルー・グリット
「またお前か」と手練れの将軍を呆れさせるマティの執念が、飲んだくれのルースターを本気にさせる。年齢も性別も超えた同志の絆に胸が高鳴る。誇り高く、正義を生きる。コートの袖を端折り、カウボーイハットに紙を詰め、馬に鞍を付けて西部を駆けるマティに、亡き父が寄り添う。
3位 光のほうへ
赤ん坊を包み込む幼い兄弟の白い聖域は、非情なる運命に奪い取られる。忘れがたい過去に縛られ、どん底にあえぐ兄弟の「もっと会えば良かった」の後悔を、兄は自らの右腕とともに葬り去り、弟の忘れ形見をその胸に抱く。痛みの中でもがき掴む、壮絶な生の実感が圧巻だ。
・光のほうへ レビューを読む
2位 バビロンの陽光
見果てぬ父の面影に焦がれる少年の初々しい瞳は、戦場に斃れた幾つもの死を眼を逸らすことなく見つめ続ける。「兵士にはならない。父さんと同じ音楽家になる」。茶目っ気だけではない、ひたすら道の果てを見据える少年の気概は、恩讐を越え、祖国の平和という希望を手繰る。
1位 サラの鍵 公開中
人は胸に秘めた痛みを告白することで、心を浄化させる能力を持つ。ジュリアが自らの裡に眠る小さな生命を想い、追い続けたサラの秘密は、60年の時を経て解放され、否応なしにルーツに直面することになった息子は、母の悲運とともに、かけがえのない生をその身に受け継ぐ。人は独りじゃない。ジル・パケ=プレネール監督のホロコーストへの鎮魂は、今を生きる私たちの心を愛しい人とともに生きている安堵感で満たす。
・『サラの鍵』公式サイト
2011年 12月17日 銀座テアトルシネマ、新宿武蔵野館他 全国順次ロードショー
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