グリーン・ランタンのハルは、混迷の時代を明るく灯す無邪気ヒーロー
日本でもハリウッドでも相変わらずコミックスの映画化が盛んだ。日本ではジャンルが多岐にわたっているのに比べ、アメコミの場合、特にスーパーヒーローものがメインなのはご存知のとおり。
その中でもグリーン・ランタンはかなり特殊なアメコミヒーローだ。地球平和のみならず、宇宙の平和を守っている。選りすぐりのさまざまな宇宙生物からなる宇宙警察機構がグリーン・ランタンたちで、闘いの現場は主に宇宙。その武器もユニーク。武器の原料は”意思”。意思のイメージカラーが、グリーンというわけ。
映画の主役は、地球人ハル・ジョーダン。地球は原始的な星とみなされていて、宇宙で起こっているさまざまな事件からも無縁。そんな未開の星から栄誉あるグリーン・ランタンの一員に選ばれることは前代未聞なことらしい。
グリーン・ランタンにパワーを与えるリングが、ハル・ジョーダンを一員に選んだ理由は定かではないし、ハルは一般男性と比べても、子供っぽさで群を抜いている。プレイボーイなのに、幼なじみのガールフレンドに頭が上がらない。飛行機事故で父を亡くした記憶が破滅的な行動をとらせる。面倒くさいからグリーン・ランタンなんてやめちゃおうかなあ、なんて言ったりもする。
ヒーローが子供っぽいだけではない。この映画には最近のアメコミヒーローたちの流行とも言うべきシリアスさや、深い人間描写がない。その代わりにあるのが、明るさや無邪気さ。底抜けに楽しい気分にさせてくれる。
子供っぽいヒーローを演じるのは、母性本能をくすぐらせずにはいられないベビーフェイスのライアン・レイノルズ。彼の起用が、映画の基調を決めたと思えるほどの好演だ。
ヒロイン役には、『ゴシップガール』のブレイク・ライヴリー。ヒーローの子供っぽさをカバーする姉御的存在感を示す。ピーター・サースガードや、マーク・ストロング、ティム・ロビンスなど、映画ファンをニヤリとさせる濃い共演陣にも注目だ。
監督のマーティン・キャンベルは、前作の『007/カジノ・ロワイヤル』でリアルなスパイを描いて成功した。今作の『グリーン・ランタン』では、さらにリアルで親近感を抱かせる人間くさいヒーローを描いたとも言える。
楽天的な時代なら、人間的深みをじっくり描く映画が新鮮だったのかもしれないが、今のような混迷の時代には、明るい気分にさせてくれる無邪気なヒーローこそがお似合いなのかもしれない。(オライカート昌子)
グリーン・ランタン
2011年9月10日(土)丸の内ピカデリー他全国ロードショー<3D/2D同時上映>
映画『グリーン・ランタン』公式サイト http://wwws.warnerbros.co.jp/greenlantern/index.html