『サウンド・オブ・サイレンス』映画レビュー ダークと薄気味悪さに挟まれた成長ストーリー

音を立てることで、恐怖と対峙する映画は、新しい恐怖ジャンルだ。『クワイエット・プレイス』、『ライト/オフ』、『ドント・ブリーズ』などがある。そのジャンルに新たな新作映画が登場。イタリアン・ホラー、『サウンド・オブ・サイレンス』だ。『ザ・レイド』シリーズなどを手掛ける「XYZ Films」が、イタリアの若手監督ユニット、「T3」と手を組み、製作された。

薄暗い屋敷。屋根裏部屋で、ガラクタ修理をしている男性。彼が古いラジオを修理し、音を鳴らすと、不思議なことが起きる。女性が現われ、音を消すと消える。その女性は徐々に近づいてきている。オープニングだ。

その後、古い写真が次から次へと映し出される。どの写真も不気味で、ラジオが傍らに置いてある。閉塞感と暗さは、アレハンドロ・アメナーバル監督の傑作ホラー、『アザーズ(2001)』を思わせる。

こんな感じの映画なの? だとしたら不気味すぎると思ったところ、本筋が始まる。全く違う空気感だ。色鮮やかなニューヨーク。歌手を目指しているエマ(ペネロペ・サンギオルジ)は、恋人ともうまくいっている。ただし、オーデションは落選続き。

イタリアにいる父が入院したという知らせで、恋人セパとともにイタリアへ。病院で父に付き添っている母は、突然豹変した父に襲われたらしく、怪我をしている。何があったのか。そこからエマの恐怖と対峙する一夜の戦いがスタートする。

怖いかと言われると、怖いというよりも、ほのぼのしたアクション寄り。そして、次第に哀しいストーリーが姿を現す。恐怖の陰に、戦乱のヨーロッパの歴史がほのかに透ける。それは、エンドロール後のおまけ映像にもつながっていく。ただし、それは全く別のストーリーだ。

『サウンド・オブ・サイレンス』は、恐怖のオープニングと薄気味悪さに彩られたエンドロールに挟まれた、エマの成長痛快ストーリーと見ることもできる。

監督の若手ユニット「T3」の、アレッサンドロ・アントナチ、ダニエル・ラスカー、ステファノ・マンダラの三人は、「パラノーマル・アクティビティ」などを輩出したアメリカ最大のホラー映画祭であるスクリームフェスト・ホラー映画祭で注目を浴び、数々の短編ホラーを生み出してきた。

『サウンド・オブ・サイレンス』は、短編を元に作られた初の英語長編映画だ。今後、「T3」が、新たなイタリアン・ホラーの旗手となるのか、注目したい。

(オライカート昌子)

サウンド・オブ・サイレンス
2024年1月26日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほか全国公開!
© 2022 T3 Directors SRL
2023年製作/93分/G/イタリア
監督・脚本・撮影・編集・製作:アレッサンドロ・アントナチ、ダニエル・ラスカー、ステファノ・マンダラ
製作:ラファエル・リナルディ、リカルド・スカルヴァ:アレッサンドロ・アントナチ ダニエル・ラスカー ステファノ・マンダラ
出演:ペネロペ・サンギオルジ、ロッコ・マラッツィタ、ルチア・カポラーソ、ダニエル・デ・マルティーノ
2023年/イタリア映画/英語・イタリア語/93分/シネスコ/5.1ch/字幕:堀池明/映倫G
原題:Sound of Silence/提供:ニューセレクト/配給:アルバトロス・フィルム/sound-of-silence.jp