『ラッシュ/プライドと友情』は、同レベルかつ、正反対の個性の持ち主が、たった一つの頂点を目指す熱いドラマである。『ビューティフル・マインド』でアカデミー監督賞を受賞したロン・ハワード監督の手腕が光る。
舞台は70年代のフォーミュラワンの世界。実在のドライバー、ジェームズ・ハントとニキ・ラウダの友情と、チャンピオンシップにまつわる実話の映画化だ。伝説的なストーリーにしかかもしだせない高揚感にひたり、映画を見ることの喜びがあふれてくる。
F1の世界は、ワールドカップと並び、世界でも最も熱狂的な舞台である。当時は事故死の確率は20パーセント。ドライバーは文字通り命を懸けて車を走らせていた。
二人の対比が鮮やかだ。あり得ないほどモテる上、女に目がなく直感的に車を走らせるジェームズ・ハントと、地味で論理的な感性の持ち主ニキ・ラウダ。
二人にまつわる対比エピソードと、レースをリアルに描いた場面が交互に描かれている。前のめりになりつつスクリーンに釘付けになってしまうほど熱いシーンが繰り広げられる。
初めは、気になるライバル同士だった二人の関係は徐々に変わっていく。レースでの戦いと、高みを目指しているものにしかわからないものが二人を結びつけ、理解しあう関係に至る。その人間ドラマも圧巻だ。
スピードレースの世界の内幕的面白さも興味を引く。たった25人のレーサーになるための熾烈な戦いと運。しかも事故を避け文字通り生き残らなくてはならない。
クライマックスの舞台は富士山スピードウェイで行われたチャンピオンシップ。当時を忠実に再現していることも格別に嬉しい。当時を知っている人も知らない人も70年当時の日本にタイムスリップした気分になるのではないだろうか。 (オライカート昌子)
・ラッシュ/プライドと友情 来日会見レポート
ラッシュ/プライドと友情
2013年 アメリカ映画/ドラマ・アクション/123分/原題:Rush/監督:ロン・ハワード/出演・キャスト:クリス・ヘムズワース(ジェームズ・ハント)、ダニエル・ブリュール(ニキ・ラウダ)、オリヴィア・ワイルド、アレクサンドラ・マリア・ララほか/配給:ギャガ
2014年2月7日(金) TOHOシネマズ 日劇ほか全国公開
『ラッシュ/プライドと友情』公式サイト http://rush.gaga.ne.jp/