『ロボット・ドリームズ』映画レビュー 絶体絶命シーンが飛び抜けている

今の時代、いい映画を見逃すことはない。それを証明してくれたのが、『ロボット・ドリームズ』だ。『ロボット・ドリームズ』は、セリフのないアニメーション。普通だったら、なかなか食指が動かない種類の作品だ。それが評価され人気が出た。SNSでの大絶賛のおかげもあり、ヒットに結びついた。

『ロボット・ドリームズ』は、動物たちが住むニューヨークが舞台だ。懐かしさを感じさせる80年代。スマホはない。ネットショップもまだない。町の商店は活気づいている。みんなが外に出て、友達や家族とともにウィンドウショッピングや公園で楽しんでいる。

だけどドッグはひとりぼっちだ。窓から見えるにぎやかな光景とは無縁。ため息と、レンジで温める夕飯と、つけているだけのテレビだげがドッグを囲んでいる。

そんなドッグが、テレビで「あなたは、寂しいですか?」という言葉に反応する。テレビショッピングの友達ロボットのコマーシャルだった。すぐに電話をかけ、あくる日、ロボットの組み立てセットが届く。それから、ドッグの世界は華麗に一変していく。

『ロボット・ドリームス』監督を務めたのは、ヨーロッパを代表する名匠パブロ・ベルヘル。ゴヤ賞最多 10 部門に輝いた『ブランカニエベス』などで日本でも知られている。今回は初のアニメーションに挑戦。

ところで、イタリアの著名監督、ナンニ・モレッティの最新映画『チネチッタで会いましょう』は、映画監督を主人公にした素敵なコメディ。爆笑シーンの一つに、ネットフィリックス人気作品に欠かせない三原則が登場する。映画の中で製作資金が枯渇。ネットフィリックスに助けを頼むのだが、脚本がダメ出しをくらう。

ダメ出しの理由は、「開始3分で、心をつかめない」「ターニングポイントがない」そして、一番大事な、「クソやべーシーンがない」”クソやべーがない”は5回くらい繰り返される。それがどんなに大事なのか、言っても言い足りないぐらいらしい。ネットフィリックスはそれを重要視しているというわけ。

映画に欠かせない、”クソやべー”、つまり絶体絶命シーン。『ロボット・ドリームズ』には、最大級のそれがある。観客の息を止めてしまうシーンだ。

音楽、郷愁、友情、ラストの余韻。親しみと美しさ温かさに溢れた画面など『ロボット・ドリームズ』のみどころは多い。絶対見逃せない作品だ。

(オライカート昌子)

ロボット・ドリームズ
新宿武蔵野館ほか、全国の映画館にて公開中
監督・脚本:パブロ・ベルヘル 原作:サラ・バロン アニメーション監督:ブノワ・フルーモン
編集:フェルナンド・フランコ アートディレクター:ホセ・ルイス・アグレダ
キャラクターデザイン:ダニエル・フェルナンデス 音楽:アルフォンソ・デ・ヴィラロンガ
2023年|スペイン・フランス|102分|カラー|アメリカンビスタ|5.1ch|原題:ROBOT DREAMS
字幕翻訳:長岡理世|配給:クロックワークス
公式HP:https://klockworx-v.com/robotdreams/
公式X:@robotdreamsjp
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