『スパイダーマン:ホームカミング』映画レビュー

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『スパイダーマン:ホームカミング』で、ついにスパイダーマンも三代目俳優の登場となった。

ジェームズ・ボンド映画やターザン、スーパーマン、バットマン並に、作品に歴史が積み上げられ、同じ役を複数の違う俳優が演じるお墨付きの人気シリーズとなったわけだ。『スパイダーマン』シリーズがお気に入りの私としては、同じ俳優で見続けたいという希望ももちろんあるけれど、キャラクターの掘り下げ方や違う側面を比較するのも楽しみだ。

今度のピーターパーカーは、『インポッシブル』(2012)で若い鮮烈な印象を残してくれたトム・ホランド。頭はいいけど、人懐こくて失敗もする。普通と普段から決してはみ出ない、ごく一般的な高校生だ。

トビー・マグワイアが演じた一代目、アンドリュー・ガーフィールドの二代目にあった悲壮感はみじんもない。若くて純粋で親近感が強い。というのも、一代目、二代目が悲劇を背負った大人で、ほぼ孤立無援の中戦ってきたが、三代目は、アベンジャーズに一度でも加わったことで、ハッピーやトニー・スタークなど強力な味方がいつも守ってくれている。前二作のピーター・パーカーが無理やり大人に押し出されてしまっていたのとそこが違う。まだ青春を謳歌できるし、大胆なことにも挑戦できる自由もある。そしてそれは、新しいピーター・パーカーの魅力でもあるし、欠点でもある。

若い観客ならともかく、大人の観客としては、彼に感情移入するというよりは、子供をハラハラしながら見守っているという感覚だ。それは主役としては少し弱い。だから大人の観客のために用意されている登場人物がいる。マイケル・キートン演じるエイドリアン・トゥームス/バルチャーだ。

存在感、感情を揺さぶる人間臭さは際立っていて、その演技力を見ることは、極上の体験だ。しかも彼は、元バットマン。いわば、スパイダーマンvsバットマンである。マーヴェル対DCの仮想対決を見ることができるのだ。敵ながらそれなりの格が用意されているところからも、それは見て取れる。

『スパイダーマン:ホームカミング』は、大人にとっては自分の生活や家族を守るためには、がむしゃらになって戦っていかなくてはならないリアルな物語として心を打つ。

ラストはさわやかさ満ちている。ラストに明かされるある人物の正体がまた、次回作へのプロローグにもなってなっていて、期待が募る。

(オライカート昌子)

スパイダーマン:ホームカミング
2017年 アメリカ映画/131分/監督:ジョン・ワッツ/出演・キャスト: トム・ホランド、マイケル・キートン、ジョン・ファヴロー、ゼンデイヤ、ドナルド・グローヴァー、ジェイコブ・バタロン、ローラ・ハリアー、マリサ・トメイ、ロバート・ダウニー・Jr、グウィネス・パルトロー、クリス・エヴァンスほか/配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト http://www.spiderman-movie.jp/