10位 ボーダレス ぼくの船の国境線
紛争地の入江に大型の廃船が棄てられている。そこに隠れて暮らすひとりの少年。ある日、突然響き渡る足音と人影によって事態は急変していく。大量破壊兵器撲滅の名の下に戦闘を拡大していった某国に対するイラン人監督のメッセージがある。字幕不要のお手本映画。
9位 オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分
BMWに乗り込み、信号機が青になってもアクセルを踏めない主人公アイヴァン。これから直面する、3つの決断を躊躇している見事な冒頭だ。夜、高速道路を疾走しながら30本以上ものケータイ通話で明らかになってくるアイヴァンの現状に身震いする密室サスペンス。
8位 草原の実験
美しい少女に心奪われ、それだけで8位に推しただろ。アタシはそう思われても何ら構わない。事実だから。2014年度の東京国際映画祭で芸術貢献賞受賞なんて堅苦しいよ。一切のセリフを排した97分間のファンタジー。耳に残るは、風とバイクと微かな呼吸音、のみ。
7位 セッション
宣伝コピーの肝は、「映画史を変えた9分19秒のクライマックス」。まんざら、嘘ではない。劇場で都合3回見たが、新宿の映画館ではついにある会社員が、「よーし!!」と大声で拳を上げていた。サディスト教師役のJ・K・シモンズが狂気の世界に誘います、ぞ。
6位 フレンチアルプスで起きたこと
スウェーデン人の気質としてあげられるのが、平等・個人主義、健康志向が強く、我慢強い反面、離婚率が高い。これらをインプットして是非劇場でご覧ください。予想だにしない雪崩が巻き起こすスウェーデン一家の5日間。ラストは座席にしがみつくこと必至です。
5位 激戦 ハート・オブ・ファイト
オープニングから30分ほどチープな演出で不安を覚えるも、その安っぽい荒さがいつしかリアルさに昇華して、見る者をグイグイと引っ張ってくれる格闘技映画。と、思わせて見終わる頃には涙あふれるハート・ウォーム映画に! これぞ、女性に薦めたい好感情な作品。
4位 マッドマックス 怒りのデス・ロード
きっと駄作、の先入観を見事に覆してくれた奇跡とも言える傑作! これが、70歳のオヤジが作った「エレキ映画」だ! バリバリと爆音可能な映画館で見なければ本質が感じ取れないマニアな映画。ジョージ・ミラー監督よ、頼むから続編は作らないでくれ! 絶対に!
3位 バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
かつての栄光を取り戻すべく新境地に挑戦するひとりの役者。酒と麻薬漬けの身体は沸点に達し、魂はその身体を離れて宙を舞い始める。ワンカット風に展開する2日半の寓話。時に荒く、時に弱々しいドラムの音に操られるがごとく魅せたマイケル・キートンに感動。
2位 ナイトクローラー
視聴率を追い求め、自ら血生臭い事件をこしらえて行く主人公に同化。これほど悪に魅力を感じる「エモーショナル映画」はそうそう無い。パワーみなぎるダン・ギルロイ監督のオリジナルストーリーとベスト・パフォーマンスを見せたジェイク・ギレンホールに拍手喝采。
1位 Mommy マミー
行動障害の息子を身体を張って守り抜く若き母親。それでも息子は問題を作り続ける。見る者の神経をむしりながらも、そこにはなぜか心地よいエスプリが漂う。若干25歳のグザヴィエ・ドラン監督作品。正方形の画面が息子の感情に合わせて形を変える見事さよ。
(選/文)武茂孝志)