今年は特に日本映画が実り豊かであり、ベストワンに推すべき作品が何本もあるので申し訳ない気持ちになる。かつては年長の映画人の作品を見上げ、その思考に触れて鍛えられてきたが、いまや、はるか年下の作家からもたしかな刺激を受ける年齢になった。それもまた喜ばしいことだ。
日本映画
1 だれかの木琴
さびしい男と女、いや、どこか傲慢な男と女の真情を、北海道の乾いた空気がくるむ。最後のホームランは、安易なハッピーエンドではなく祈りである。
3 葛城事件
他人事のように眺めてきた不幸な事件や凶悪な事件が、全く違う表情で立ち上がる。赤堀雅秋監督の問いかけを、三浦友和がクールに体現して最高だ。
4 モヒカン故郷に帰る
ありふれた難病もの、余命ものを軽々といなす家族のドラマ。平凡な妻を演じて、ひっそりハードボイルドな意気地を見せる女優、もたいまさこが素敵。
5 64-ロクヨンー
悲惨な事件でいやおうなく結ばれた被害者家族と捜査関係者の“歴史”。前編の佐藤浩市、後編の永瀬正敏をはじめとした中堅、若手男優陣がきらめく。
外国映画
1 ルーム
誘拐、監禁され、一児をもうけた若い娘のサバイバルと脱出。その後の現実世界の酷薄さが興味本位の観客を打ちのめす。再生を示唆するラストが気高い。
時代に禁じられた恋に身をゆだねる女たちの覚悟と緊張感。ケイト・ブランシェットのエレガンスの前では、すべての男が格下で野卑な存在に見えてくる。
3 ザ・ギフト
4 ゴーストバスターズ(2016)
ひいきのコメディエンヌ、クリステン・ウィグ、メリッサ・マッカーシーの艶姿を見るたびに正月気分。たとえ続編は無理でも彼女らの活躍は続いてほしい。
5 最高の花婿
ロワール地方の夫婦の4人娘が選んだ結婚相手はすべて外国人。移民国家フランスの現状を明るく皮肉るコメディーで、野暮ったさ全開に知性を感じる。