高潔とは無縁、切れ者でめちゃめちゃ稼いでいる弁護士がいる。ステレオタイプだし、いやみなやつには違いない。だが、これをスターのロバート・ダウニー・jrが演じると、器用に魅力を振りまくので好きになれなくても嫌いにはなれない。もちろん、最後までこのままでいるわけではない。いい感じに変わっていくのが『ジャッジ 裁かれる判事』のみどころである。
大都会にでてきて財産も作り、離婚危機に直面しているものの、ナイスバディな妻とかわいい娘に恵まれている。ハンクは母の訃報を聞き、20年間足を踏み入れていない故郷に戻る。女っ気のない実家には、結婚して家を出ている兄と弟、そして判事として長く待ちの秩序を守ってきた名士の父がいる。
久しぶりに帰郷したというのに、ハンクはまるで「お呼びじゃない」状態だ。昔の彼女に出会ったり、バーで若い女の子といい感じになったりするものの、さっさと都会に帰るつもりでいた。父に殺人容疑がかかるまでは。父を救うためにハンクは弁護の技巧を発揮することになる、そして事件の底には思いがけない真相があった。
真相を暴きつつ、そこに絡まるのは、愛されたい。認められたいというやるせない思いだ。そしてそれは、私たち誰もが多少は持っているはずのものでもある。年月とともに外側は変わるけれど、心の中には「愛されたい」、気持ちの塊が残ったままで変容を拒む。ハンクの場合は、絶縁していた父と、改めて関わることで、ようやくわだかまりが解け、外側の変化に内側が追いついていく。
ハンクの変化は、見ている私たちにも多少の作用を与えるようだ。ラストシーンまでくると、心の中が暖かくなって、なぜかホッとしていることに気づく。改めて映画の力を思い出させてくれる一作。(オライカート昌子)
ジャッジ 裁かれる判事
2014年 アメリカ映画/サスペンス・ドラマ/142分/監督: デヴィッド・ドブキン/出演・キャスト: ロバート・ダウニー・Jr、ロバート・デュヴァル、ヴェラ・ファーミガ、ヴィンセント・ドノフリオ、、ジェレミー・ストロング、ビリー・ボブ・ソーントン他/配給:ワーナー・ブラザース
、2015年1月17日(土)新宿ピカデリー 他ロードショー
『ジャッジ 裁かれる判事』 公式サイト http://wwws.warnerbros.co.jp/thejudge/