人生には安らぎや癒しが必要だ。たった一つの映画、『ペンギン・レッスン』が、ビタミン補給のように十分な安らぎや癒しをあなたに与えてくれるかもしれない。

舞台は1970年代のアルゼンチン、ブエノスアイレス。苛酷な時代だった。その時代に実際に起きた奇跡的な出来事を、柔らかい筆致で描いている。心を揺さぶる力は強い。英語教師トムに訪れたひとつの出会いが、彼を変え、彼の周囲を変えていく、熾烈な時代を背景にしながら、自然な流れの心地良さが時代を超えてスクリーンから溢れだす。
1974年のアルゼンチンは、軍事政権下にあり、暴力が覆い尽くしていた。平穏とは程遠い世界。英国人のトムは富裕層の子どもが通う寄宿学校に赴任。人生全てをあきらめているかのような彼は、気楽な仕事と思って引き受けたものの、アルゼンチンの世情は厳しく、生徒たちの学習意欲も低かった。そんなある日、一つの出会いが突破口となり彼の人生を変えていく。

軍事クーデターが勃発。それを避け、隣国チリで気楽な休暇をすごそうとしたトムが出会ったのが、ペンギンだった。海岸での散歩の途中に彼が見たのは、海岸に打ち上げられていた無数のペンギン。油まみれだった。たった一匹だけ動いていた。普段の彼なら平気で見捨てている。ところがその時は事情があった。

誰と出会おうと、出会いそのものが奇跡であることを端的に詩的に完全なストーリーとして描いているところに『ペンギンレッスン』の傑出した点がある。一人一人が悩みや壁を持っているけれど、その障壁を和らげながら壊してしまう存在は、案外身近なところにあるのかもしれない。ペタペタと歩くペンギンの足音を思い出すと、心がふっと軽くなる。一つの奇跡、一つの実話、一つの存在との出会いは思ったより大きいのかもしれない。
ペンギン・レッスン
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12月5日(金)より、新宿ピカデリー、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
配給:ロングライド
監督:ピーター・カッタネオ 脚本:ジェフ・ポープ 原作:トム・ミシェル「人生を変えてくれたペンギン 海辺で君を見つけた日」
出演:スティーヴ・クーガン、ヴィヴィアン・エル・ジャバー、ビョルン・グスタフソン、アルフォンシーナ・カロッチオ、デイヴィッド・エレロ、ジョナサン・プライス
2024年/スペイン、イギリス/英語、スペイン語/112分/ビスタ/カラー/5.1ch/原題:THE PENGUIN LESSONS/日本語字幕:斉藤敦子/配給:ロングライド © 2024 NOSTROMO PRODUCTION STUDIOS S.L; NOSTROMO PICTURES CANARIAS S.L; PENGUIN LESSONS, LTD. ALL RIGHTS RESERVED. https://longride.jp/lineup/




