
ブライアン・デ・パルマ監督のカルト映画
『ファントム・オブ・パラダイス』(1974)を見直してみた。
人間の顔した悪魔にダマされて、刑務所送りとなった
天才作曲家が収監されたのがシンシン刑務所である。
極悪人が収監されるシンシン刑務所はニューヨーク・ハドソン川沿いにある。
シドニー・ルメット監督代表作のひとつ『狼たちの午後』(1975)。
これにもシンシン刑務所を匂わせるセリフが連呼される。
猛暑白昼堂々、ニューヨークの銀行に押し入った強盗が警官隊に包囲され
野次馬に大声でまくし立てるコトバがシンシン刑務所を連想させるのだ。
強盗に扮したのはアル・パチーノ。
先の悪魔に扮したのはポール・ウィリアムズ。
2作品とも映画黄金期70年代の傑作なのでオススメである。
映画『シンシン/SING SING』ではその名のとおり、
シンシン刑務所内の収監者更生プログラムである舞台演劇班で、
有志の収監者たちと日々演劇に取り組む姿が画かれている。
こうした刑務所内のプログラムは
ヨーロッパはじめ多くの国々で実話映画化として製作されているが、
この『シンシン/SING SING』の目玉は主人公ディヴァインを演じた
遅咲きの役者コールマン・ドミンゴ(55歳)である。
2023年のNetflix作品『ラスティン:ワシントンの「あの日」を作った男』
(なんて分かり難く陳腐な邦題だろう)で
公民権運動の主導者ラスティン役を務め、
アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞、全米映画俳優組合賞、
さらに英国アカデミー賞にもノミネートされた今注目の俳優である。
あのイドリス・エルバにも似た渋くて愁いの表情も魅力的な役者。
「あー、新生ジェームズ・ボンドはコールマン・ドミンゴだったよなぁ」
なんて贔屓過ぎだろうか。
『シンシン/SING SING』ではコールマン・ドミンゴを柱に、
主要キャストのほとんどがシンシン刑務所の元収監者として
演劇プログラムに関わっている。
だからまるでドキュメンタリーでもあるわけだね。
最重警備のシンシン刑務所の割には(快適そうな)個室が与えられ、
施設内といえども屋外で自由気ままな時間を過ごしている収監者たちを見ると、
「アメリカの刑務所はこんなにも緩いのか」なんて疑問を持つが、
映画のコトとあって実際は分からない。
まずは己の目で確かめてみてはいかがか。
エンドロールで主題歌「Like a Bird」に乗って登場人物が紹介される
カーテンコールが心地よい。
帰り道、『ファントム・オブ・パラダイス』
『狼たちの午後』をレンタルしよう。
『シンシン/SING SING』の味わいがグッと増すはずだ。
『シンシン/SING SING』
4 月 11 日(金)よりTOHO シネマズ シャンテほかにて全国順次公開中
【配給】ギャガ
© 2023 DIVINE FILM, LLC. All rights reserved.
監督:グレッグ・クウェダー
出演:コールマン・ドミンゴ、クラレンス・マクリン、
ショーン・サン・ホセ、ポール・レイシー
原題:SING SING | 2023 年 | アメリカ | カラー | ビスタ | 5.1ch | 107 分
字幕翻訳:風間綾平