『プロフェッショナル』映画レビュー 見事なローカルアンサンブルアクション

映画『プロフェッショナル』を、アクション映画というカテゴリーだけでとらえるのはもったいない。1970年代のアイルランドのひっそりとした田舎町。広陵と海に恵まれている。そこにワープするような体験型映画だ。町の人と知り合い、そこで暮らしているような。

その時代のアイルランドは怖ろしい場所だったが、その町は静かで居心地が良さそうだ。秘密はある。例えば主人公フィンバー(リーアム・ニーソン)の仕事。

冒頭は穏やかではない。IRAのメンバーが暗躍している。ベルファストの市内のカフェ前の車に爆弾を仕掛けていた。爆弾はタイミングで爆発する。予期せぬ出来事が起こり、一味は逃げ出すことになる。逃げ出した先が、その海と山に囲まれた静かな町だったのだ。

平和な生活を営んでいた町に悪が浸透してくる。フィンバーは、秘密の仕事をしながらも町の一員として溶け込んでいた。フィンバーはどのように悪と対峙するのか。

監督のロバート・ロレンツは、リーアム・ニーソンと『マークスマン』で組んでいる。話を持ち掛けたのは、リーアム・ニーソンの方だったという。ロケもアイルランド。出演者もアイルランド人で揃えている『プロフェッショナル』をアメリカ人監督のロバート・ロレンツに頼んだということは、それだけ手腕に信頼があったからだろう。

ゆったりとしたリズムで進む『プロフェッショナル』が、やがてスリルを帯び、ジグソーパズルが完成する時点で完璧な後味を残す。ニューヨークタイムスは、『プロフェッショナル』を”リーアム・ニーソンの最高傑作”と評している。

そうか、旅をして滞在しているような気分にさせてくれるのは、見事なローカルアンサンブルキャストのおかげだ。リーアム・ニーソンを中心として、その他の出演者の貢献は大きい。

IRAの女闘士デラン・マッキャンを演じるケリー・コンドンは背筋が寒くなるようなきっぱりとした演技を見せてくれる。キアラン・ハインズ、コルム・ミーニイの二人は、いろいろな映画で見かける顔だが、『プロフェッショナル』で見せる存在感と魅力は見たことがない。

ケビンを演じるジャック・グリーソン。2011年、HBOのドラマシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』のジョフリー・バラシオン役で悪い意味でのブレイク。その後俳優業を引退までしてしまった。だが『プロフェッショナル』で見せる役柄は忘れられないインパクトがある。『プロフェッショナル』は、素材を揃え、最高の料理人がいれば、素晴らしい映画ができることを改めて確認させてくれる。

(オライカート昌子)

プロフェッショナル
4月11日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

監督:ロバート・ロレンツ フィリップ・リー 製作:フィリップ・リー 撮影:トム・スターン
出演:リーアム・ニーソン、ケリー・コンドン、ジャック・グリーソン、キアラン・ハインズ、デズモンド・イーストウッド、コルム・ミーニイ
2025|アイルランド|106分|シネマスコープ|5.1ch|
英題:In The Land of Saints and Sinners|字幕翻訳:西澤志保
配給:AMGエンタテインメント|映倫:G
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