『片思い世界』映画レビュー 感涙アドベンチャーワールド周遊映画

映画『片思い世界』は、タイトルにインパクトを感じる。心に秘める片思いのカケラを思いだして、『片思い世界』を見に行く人もいるだろう。脚本、監督が同じ(脚本・坂元裕二、監督・土井裕泰)ため、『花束みたいな恋をした』のような世界にもう一度浸かりたくて見に行く人もいるだろう。

もっと大きく考えて欲しい。同じような世界をずっと描いていきたいと思うアーティストは少ない。もっと世界を広げたい、進化させたいと思うのが普通。そういう意味で『片思い世界』が描く世界は、大きい。映画を見るのが冒険なら、『片思い世界』のアドベンチャーワールドは挑戦する価値がある。

『花束みたいな恋をした』を思わせる部分もある。家やインテリア、ファッション美術・衣装部分。そして女子(男子)の心理の細やかさにも。

主人公、相楽美咲(広瀬すず)、片石優花(杉咲花)、阿澄さくら(清原果耶)の三人の女性の書き分けも鮮明だ。

美咲、優花、さくらは、東京のモダンで古びた家で暮らしている。歳は違うけれど仲良し。その日はさくらの誕生日。盛大にサプライズパーティを計画していた美咲、優花だったけれど、不発だった。むしろサプライズに被弾してしまったのは二人の方だった。

一緒の部屋に寝て、一緒に歯磨きをする。朝7時にはお弁当を持って三人同時に出かける。美咲はオフィスへ。優花は大学。さくらはアルバイト。仲良しの三人にはどういう絆があるのだろう。観客はゆっくりと三人の世界へ招き入れられる。

坂元裕二によるオリジナル脚本は、自在性をフルにスパークさせている。『片思い世界』のタイトルの重みを感じたとき、あなたは感涙にむせぶかもしれない。

広瀬すず、杉咲花、清原果耶の三人は、個性の違いと実力、そして美しさが際立っている。高杉典真役の横浜流星は、印象の変化度が著しく、その存在を光らせている。

(オライカート昌子)

片思い世界
2025年4月4日より公開中
2025年製作/126分/G/日本
配給:東京テアトル、リトルモア
(C)2025「片思い世界」製作委員会