『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』映画レビュー 気軽に見れるホラーだが、奥の深淵が怖い

廃墟に見える古いピザ屋の警備室。警備員が機械仕掛けのぬいぐるみに追いかけられる。死の危険は目前だ。『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』は、こうして始まる。同名人気ゲームの映画化。機械仕掛けのぬいぐるみの可愛いらしさと奇怪さが混在している様子は、tiktokでも人気。

震撼するというよりは、気軽に見ることができる。そして妙にそそられる。『M3GAN/ミーガン』もそうだった。ホラー映画で人気のブラムハウスプロダクション製作作品のトレードマークだ。『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』は、その特徴を持ちつつ、悲劇的な深淵の世界も垣間見せる。

主人公のマイク(ジョシュ・ハッチャーソン)は、なかなか定職につけない。過去に起きた悲劇が一つの理由だ。妹アビーの世話もしている。アビー(エリザベス・レイル)は少し変わっていて、あまり会話せず、食べもせず、学校にも行っていないようだ。しかも友人は見えない存在。彼女がしていることは、お絵描きばかり。叔母ジェーン(メアリー・スチュアート・マスターソン)は、アビーの養育権を狙っている。養育費が欲しいらしい。

マイクは、アビーの養育権を譲ってもいいと思っているが、アビーはマイクが大好き。その気持ちを袖にはできない。だから、マイクはアビーのためにも、必死で仕事を探す。そんな彼にやってきたのが、閉店している「フレディ・ファズベアーズ・ピザ」の夜間警備員の仕事だった。

「フレディ・ファズベアーズ・ピザ」の封鎖空間は、80年代テイストで懐かしさをかもしだす。ビデオ、カセットテープ、音楽、色使い、テクノ風味など、レトロ色も濃い。

中でも、一番懐かしさを感じさせるのは、配役だ。主演のジョシュ・ハッチャーソンは、2000年代を代表する子役スター。叔母のジェーン役には、メアリー・スチュアート・マスターソン。製作・脚本がジョン・ヒューズの『恋しくて(1987)』で大ブレイクし、80年代から90年代に主演作が目白押しのスターだった。この二人を見ると、心はその時代に戻る。

『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』は、歴史感覚とホラーの合体で、独特の映像空間が浮かび上がらせる。だがその奥にある闇も、ほんのり見えてくる。そこに恐怖の源がある。キーワードは、子どもの失踪と、ピザ。

人によっては、”ピザゲート”を思い出すこともあるだろう。ピザゲートは、陰謀論で片づけられたり、虚偽だと言われているが、多数の子供の失踪は現実にあるし、映画でもおなじみの題材だ。もし、そのような闇の世界が本当にあるとしたら、それに巻き込まれてしまった子どもたちの、悲しさと恐怖心は、うかがい知れない。

ストーリーは、多少の迷走はあるものの、着地点は良い。元気が出るホラーというのも、ブラムハウス製作作品のトレードマークか。

(オライカート昌子)

ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ
2月9日(金)より、全国公開
©2023 Universal Studios. All Rights Reserved.
配給:東宝東和
出演:ジョシュ・ハッチャーソン(『ハンガー・ゲーム』シリーズ)、
エリザベス・レイル(「YOU―君がすべて―」)、
パイパー・ルビオ、
マシュー・リラード(『スクリーム』)他
製作:ジェイソン・ブラム、スコット・カーソン
監督:エマ・タミ
脚本:スコット・カーソンand セス・カデバック& エマ・タミ
原案:ゲーム「Five Nights at Freddy’s」シリーズ/スコット・カーソン