© 2016 GRAVIER PRODUCTIONS, INC. 
ある保養地での二人の会話。
「ホント、まずい食事だね」
「そう、量も少ないし」

これはウディ・アレン監督『アニー・ホール』(1977年)のオープニング・ジョーク。

アレンは続けて、「人生は寂しく、みじめで苦しく、しかもアッという間だ」とこれまた不条理なセリフを吐いて、「これがボクの人生観です」と説いた。

小品ながら見事アカデミー作品賞にまで登りつめたこの『アニー・ホール』は、別れた女性に未練タラタラの40代男をウディ・アレン本人が自作自演して見せた傑作。

紆余曲折を経て愛する人と別れてしまったアレンは最後にこう呟く。

こんなジョークもあるんだ。
精神科医に男が、「弟は自分がメンドリだと思い込んでいます」
医師、「入院させなさい」
男、「でも卵は欲しいのでね」
男女の関係もこの話と似ている。およそ非理性的で不合理なことばかり。
それでも付き合うのは卵が欲しいからでしょう。。。

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『アニー・ホール』同様、ウディ・アレンの新作『カフェ・ソサエティ』もニューヨークとロサンゼルスに舞台を置いた物語だ。

1930年代の社交界(カフェ・ソサエティ)は芸能人から政治家、ギャングまで様々な人種で溢れかえっていた。。。

そこに飛び込んだユダヤ青年ボビー。

『カフェ・ソサエティ』は、彼の恋愛を通してきらびやかな世界の光と影を浮き彫りにしていくラブ・ストーリー。

ウディ・アレンは、『アニー・ホール』から40年経った『カフェ・ソサエティ』でも、「愛と人の関係はしばしば痛みを伴い、フクザツなものにもかかわらず、誰もが必要としているものなのだ」というメッセージを匂わせる。

ボビー(ジェシー・アイゼンバーグ)に愛されるヴェロニカ(クリステン・スチュワート)の移り気が悩ましい。

傷心のボビーがニューヨークで見つけたもう一人のヴェロニカ(ブレイク・ライブリー)。彼女も過去が謎めいている。

ふたりのヴェロニカの間で揺れるボビー。さて、その恋の行く末は。。。

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ブロンクス育ち、ビバリーヒルズでのデート、マリブビーチでの告白、シャンパン飛び交うナイトクラブから、きらびやかなニューイヤーズ・パーティーまで、その裏でうごめく葛藤、恐喝、そしてユダヤ人の掟。

難儀? 心配ご無用。ウディ・アレンお馴染みのロマンチック・コメディである。

1930年代、社交界の黄金期、その時代を回想したカメラが絶品だ。

撮影監督は、イタリア人ヴィットリオ・ストラーロ、77歳。

『地獄の黙示録』(1979年)、『レッズ』(1981年)、『ラストエンペラー』(1987年)で3度のアカデミー賞受賞歴がある、言わば、人間国宝。

ウディ・アレン監督とは初仕事で、さらに両者にとって初めてのデジタルカメラ撮影となる。

フィルムカメラでなく、デジタルカメラの技術がようやく満足できるレベルに進歩したということで、ストラーロ先生(!)によると、「ブロンクスのシーンは彩度を落とし、冬の夕方の灯りのようにしている。一方、ハリウッドは暖かい色調に鮮やかな原色。非常に明るい」とある。(プレス資料より)

物語が進み、登場人物の恋心が様変わりしていくにつれ、色彩がゆったりと変貌していく見事さは他にはあるまい。

今更ながらストラーロ撮影の神髄を見せつけられた思いで胸がいっぱいになる。

『カフェ・ソサエティ』のために特別に作られたシャネル提供の衣装も特筆ものだ。

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ライトピンクのシルクとレースのドレス、白いシルクのショートパンツ、オフホワイトのシルクとレースのドレス、、、クリステン・スチュワートがブランド・ミューズを務めるシャネルとあって、その本気度が見て取れる。

そういえば、『アニー・ホール』でも、名女優ダイアン・キートンの衣装が当時話題になったなぁ。ベストの上に男っぽい大きめのブレザー、パンタロンにブーツ、極め付きはラルフ・ローレンのネクタイ姿。

ほらね、『カフェ・ソサエティ』は『アニー・ホール』と姉妹品だったんだ。

映画『カフェ・ソサエティ』は恋人同士で見ても構わない。
でもね、それぞれ一人で見てはいかがかな。
同じ上映回を席を離れて鑑賞するのもイカしているな。

終映後、愛する人に会いたくなる、
誰かに電話したくなるキュートなラストが用意された映画だから。

(武茂孝志)

カフェ・ソサエティ
5月5日(金・祝) TOHOシネマズ みゆき座ほか全国公開!
監督&脚本:ウディ・アレン『ミッドナイト・イン・パリ』『ブルージャスミン』『マジック・イン・ムーンライト』
キャスト:ジェシー・アイゼンバーグ『ローマでアモーレ』、
クリステン・スチュワート『トワイライト』シリーズ
ブレイク・ライブリー『ロスト・バケーション』、
スティーヴ・カレル『フォックスキャッチャー』
パーカー・ポージー『教授のおかしな妄想殺人』
2016年/アメリカ/英語/1時間36分/日本語字幕:松崎広幸 提供:KADOKAWA、ロングライド 配給:ロングライド
公式HP:movie-cafesociety.com 

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