『レヴェナント:蘇えりし者』レオナルド・ディカプリオ来日会見レポート

(C)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved
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4月22日(金)より公開の『レヴェナント:蘇えりし者』のプロモーションで、主演のレオナルド・ディカプリオが来日しました。その会見の模様をお伝えします。『レヴェナント:蘇えりし者』で、アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督は、昨年の『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』の受賞に続き二年連続でアカデミー監督賞を受賞。レオナルド・ディカプリオも本作で悲願の主演男優賞を受賞しました。

『レヴェナント:蘇えりし者』は永遠に映画史に残る作品

「主演男優賞につながった一番の要因は?」という質問に、レオナルドさんは「どうして私が受賞できたのか分析するのは難しいものですが、この映画自体、私にとっても映画に参加したすべての人にとって特別なものだった思います。これは、つながりが感じ取れる作品、人々がこの世界観に入り込める作品でもあり、私もスタッフもそうなのですが、一年近くこの世界にどっぷりとつかりました。

アレハンドロは、いろいろなテクニックでこの作品を作り上げました。彼がどうやってこれだけの作品を作り上げたのか、私には今でも理解しがたいです。永遠に映画史に残るような芸術作品だと私は思っています。これほどの作品に私はもうかかわれないかもしれない。それほどに私にとっては重要な人生における第一章でした」と答えました。

「オスカー像はどこに?」という質問に「家の居間にあります。友達がみんな見せてほしいとと好奇心を持っていってきますし、僕もあそこにあるのがとてもうれしい」と答えていました。

「父親を演じるのはどうですか?」という質問に、レオナルドさんは「興味深い設定だと思う。あのような時代に生きる父親で、しかも子供は白人とネイティブアメリカンのハーフ。あの時代ではとても複雑なことになります。というのも、西洋からまだ大西部というものが完全に制覇されていない。また原住民が住んでいる場所は、まだまだ未開の地である。

西洋の人々は、どんどん海岸から大陸を横断しつつ攻めていっている。そういうところで、動物たちを殺し、その毛皮をヨーロッパに輸出するというような商売を始める、そして原住民たちの生活を脅かしている。そういう状況の中で私のキャラクターというのは、人種差別のようなものを意識しながら、自分の息子をなんとか守ろうとします。息子は生き延びるためには存在を消さなくてはならないと、感じていますし、父親は子供を守りたいという一身から子供にいろいろ教えていきます」

撮影はすべて自然光で撮りたいということで一日8時間以上リハーサルをした

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「オスカーを受賞して、俳優人生はどう変わりましたか」という質問に、「まだあまり時間がたっていないので、生活がどう変わったか、俳優としてどう変わっていくかは、まだわからない。これは未知のことなんですね。私としては、まったく変わらないことを望んでいます。

この受賞はとてもありがたいですし、すばらしいことでいい気分にもなりますが、私が仕事をするのは、もともと持っていた夢や理想をどんどん追求していくためで、そして最高の作品を作り上げていくことがやりたいことなんです。15歳からこの仕事をしていますが、偉大な俳優たちの肩の上に乗っていると思う。僕の英雄であるそのような方たちの後に続いていきたい。この映画を作る仕事は本当に大好きなんです。

「今回は休養宣言を撤回して、仕事を受けたと聞いたのですが、そこまでこの作品にほれ込んだ理由は?」という質問に「脚本を読んで引かれたということもありますが、天才的なアレハンドロ監督と組めるということも理由です。『アモーレス・ペロス』のころからずっとファンです。そして、『バベル』を見たときに、なんて画期的な作品なんだろうと思いました。また彼といつも組んでいるカメラマンのエマニュエル・ルベツキさんと組むのも楽しみにしていたこともありました。

映画的な体験として独創的なものでした。映画を作っているというより、壮大な旅に出かけているという感じでした。監督のスタイルや撮影方法はあまりにも特別、そして独創的なものなので、このチャンスは逃してはいけないと思いました。

確かに過酷な撮影になるというのはみんな覚悟していました。そしてかなり遠い、辺鄙なところまで出かけて、氷点下という酷寒の中での撮影ということ、そして一つ一つのアクションシーンがとても複雑なものになることもわかっていました。

そして監督は、すべて自然光で、すべてを撮りたいということがありまして、これも画期的なことなんですが、だいたい一日中、8時間から9時間、わたしたちはリハーサルをするのです。そしてチーボが呼んでる、マジックライト(魔法の光)の中で、一時間半だけ撮影する。

毎日稽古するので、まるで演劇の舞台に臨んでいるような、アドレナリンがでて、複雑なシーンを非常に短い時間で撮影したのです。過酷なものでしたが、それが映画に貢献したと思います。だからこそ、こういう作品が出来上がったのだと思います。

監督はものすごい情熱を注いで、画期的なことをいろいろしました。そういうことは今後作品が見られたとき、見返されたときに、監督がやり遂げたということが評価されると思います」と答えていました。

冒頭のシーンは2ヶ月以上準備した

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「過酷な状況の中で演技するモチベーションをあげるのに役立ったことは」という質問に、「一番チャレンジだったことは、やはり寒さでした。スタントやアクションは何ヶ月も準備期間がありました。たとえば、冒頭のシークエンスは一ヶ月以上準備しています。そのショットを監督がとてもこだわったというのもあります。

寒さやロケ地の過酷さなどの状況は本当に大変でした。アカデミー賞のスピーチでも申し上げたことですが、現在は気候変動の問題もあり、撮影中、寒かったかと思ったら、突然暖かくなり、雪が消えてしまい、アルゼンチンの南端まで雪を探していったということもありました。

こういう作品というのは二度とやらないかもしれません。投資するスタジオもないかもしれませんが、僕はこういう作品で困難な撮影状況を体験したことを後から振り返っても誇りに感じるはずだと思います」と答えていました。

長期にサバイバルをされたのですが、今の生活の生活の中で三つだけ持っていくなら何ですか?オスカー像は入ってますか?という質問に「電話、ソーラーパネルのような、充電が切れないようにする装置、日を起こせるような防水のライターです。サバイバルの映画に出演しているのですが、実際にそれを経験しました。人類は環境に順応するものだと言われてはいますが、あの人たちは本当にすごい過酷さに耐えていて、僕人身は耐えられないと思います。オスカー像は家に置いておきます」

トム・ハーディには直談判をして出演してもらった

「トム・ハーディに関しては、楽しいエピソードでも話したいところですが、この作品については楽しさ的なものは一切ありません。というのも撮影が過酷過ぎるところがありましたので。トムと私のキャラクターというのは、同じコインの裏表ではないかと思っています。

全員が生き延びようとサバイバルしているのですが、この二人は、戻りたい、生き延びたいという気持ちがとても強くでていると思います。トムの演じるキャラクターは人種差別もあるし、友人を後ろからナイフ刺すようなところもありますが、彼の理屈はよく理解できるものです。グラスとフィッツジラルドという二人の対比が実によくできていると思います。煙が上がっていって雲になってトムが現れるシーンなど印象的です。グラスもフッツジラルドもお互い呪われているところがあるのです。

あのようなすばらしい俳優さんと一緒の仕事は私も高められると思います。彼とは『インセプション』で共演したときから仲良しになりました。男らしさや強さを持ちながら、共感できる部分もある。この年代の俳優の中では、彼は最高であると僕は思っていますし、ぜひ彼を起用してくれと監督に頼みました。トム・ハーディと共演できてとても光栄ですし、今後も共演していきたいと思っています」と語っていました。

監督とは多岐にわたって話し合った。話の内容が映画の中で生かされている

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「人間のサバイバルの物語であり、大自然の中でのサバイバルの物語でもあり、そして監督は画期的な作品作りをしました、黒澤明監督の『椿三十郎』や『用心棒も』そうですし、タルコフスキーのスタイルの影響も受けています。ロングショットの多用などですね。

私は作品についていろいろなことを監督と話し合いました。そしてその話の内容が作品の中にいろいろ出てきています。特に環境問題について、人間との関係について、永木に渡っていろいろとはなしました。そして、アメリカの本当の大自然の中、純粋な場所に資本主義が入ってきて、商業が起こり、白人対原住民の争いが起こり、戦いになります。グラスがサバイバルするだけでなく、アメリカが資本主義に侵されていくということ。そしてそれはまさに今、世界中で起こっていることでもあります。石油のような資源を手に入れようとする人々が、何千もの間守られてきた自然や動物の暮らしのなかに入り込んでいき、荒らしていく有様です。私がずっと考えてきた環境問題が、この作品にはたくさん描かれていると思います。

「撮影が終わったときの気持ちは?」という質問に「たぶんこの質問が『レヴェナント』について質問を受ける最後だと思います。六ヶ月間ずっとプロモーションをしてきました。二年間かけた映画でもあります。準備期間、監督との話し合い、ひげを生やすところから始まって、この期間は、私の人生の中で重要な一章になるのではないかと思います。映画を作ったというより、体験したという感じです。本当に特別な作品だったんです。基本的な人生のサバイバルを描いているのですが、人生というのは何なのか、我々はなにをするべきなのかというという意味深いものでした。それはキャストスタッフみんなが感じていることだと思います。

同時にこの映画を撮っているときに、フィッシャー・スティーブンという『ザ・コーブ』という作品を撮ったドキュメンタリー映画作家がいるのですが、彼と一緒にドキュメンタリー映画を撮っていたんです。中国にもインドにも南極にも北極にも行きました。これからインドネシアにも行きます。今本当にどんどん地球が変わってきていて、私たちは地球がどうサバイバルしていくのかを考える必要があると思います。

私はこの作品を通しているいろいろなことを学びました。今、ターニングポイントにいると思います。映画とドキュメンタリーを同時に取っていて、両方同じテーマを扱い、そして人間という種が本当に生き延びられるのかどうかということ、人類が地球を操ったがためにその結果がでているということで、私は世界中の人が人種、宗教に限らずすべての人が問題意識を持って欲しいと思っています。ドキュメンタリーは選挙の前に公開できたらと思います。

(取材/文 オライカート昌子)

レヴェナント:蘇えりし者
監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ【キャスト】レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディ、ドーナル・グリーソン、ウィル・ポールター【音楽】坂本龍一
2016年4月22日
日劇他全国ロードショー
公式サイト http://www.foxmovies-jp.com/revenant