劇場限定公開2ヶ月近く経ってもまだ熱気は収まるどころか、どんどん高まっている映画があります。インド大作歴史映画『バーフバリ 王の凱旋』です。この映画にはいくつも見逃せないポイントが詰まってます。もう見た人も、ちょっと気になる人も、ぜひチェック。
『バーフバリ』は二部作ですが、両作品とも、インドの映画興行収入を塗り替え、全米ボックスオフィスでも、前作の『バーフバリ 伝説誕生』の9位から、『バーフバリ 王の凱旋』は、ジャンプアップの3位となりました。
日本でも、私が行ったのは公開後一ヵ月以上経った後でしたが、平日の夜8時半開演ながら、ほぼ満席。最後には拍手も巻き起こるという、見たことのない光景に度肝を抜かれました。まもなく『バーフバリ 伝説誕生』もDVDで見ることができますが、圧倒的な映像力を持つこの作品こそ、また見れるチャンスがあれば、劇場で見たい一品です。
ポイント1 ここが凄い!変化する演技
バーフバリは、祖父、父、子 三代(メインストーリーは父と子)の壮大なストーリーであり、長い時間をまたいでいます。その中でも役が変遷していく姿は大きなみどころ。
特にヒロインのデーヴァセーナの変化には驚かされます。『バーフバリ 伝説誕生』では、鎖につながれ、老いた醜い姿で登場し、秘密が明かされる過去編の『バーフバリ 王の凱旋』ではかつての姿が描かれています。武芸に優れている上艶やかで可憐、同時に芯の強さを持った姿です。
しかもデーヴァセーナの場合は、時間が経ち、姿かたちは変わっても、内面の心の強さは全く変わらないのです。ブレずに真っ直ぐなまま保持しているところが一番の魅力。どんなに虐げられても自分を捨てないところに心惹かれます。
デーヴァセーナと違って、父のバーフバリと子のシヴドゥの両者を演じる主演のプラバースの場合は正反対。この父と子の姿かたちは同じ。強さも同じ。ところが中身が全く違うのです。
子のシヴドゥは、成熟前の若い猛々しい男。何をするのも荒くて、少々危なっかしさがあります。父のバーフバリは、王家の跡継ぎだけあって、精悍でいて繊細。強さと知性のバランスが絶妙で、映画史上でも稀に見るほどの魅惑の男です。この別人の二人を、変わらない容姿ながら演じ分けるのですから、主演のプラバースの力量は相当なものです。
ポイント2 ここが凄い!スペクタクルシーン
お金と時間と人海戦術で作り上げられたいくつもの戦闘シーンは、両作品とも桁外れ。普通なら一本の映画に一回歩かないかのクライマックスレベルの戦闘がいくつも描かれています。しかも面白い。ただ戦うだけではないところもみどころ。
最初にこの戦闘に勝つなんて無理!というような難題があり、それを戦略で崩していくのです。戦争シーンの中にもストーリがあり、起承転結もある。つまり見ていて爽快感をもたらしてくれるのです。
けたはずれなのは、戦闘シーンだけではありません。暴君バラーラデーヴァとその父ビッジャラデーヴァの悪辣さや残酷さも、はんぱないレベル。前に立ちふさがるなら、人民も家族も誰でも関係なく処理していくだけでなく、かつての王妃を何十年も庭に鎖でつないでおくなんて、その暴君ぶりは大したもの。彼らがどのように、誰もが愛するバーフバリを排除し、そして最後に復讐されるのか、大いに興味を惹かれます。
インド映画最大のお金のかけ方や豪華さも、まさに本物。身につけるもの一つ一つ、セットの細部まで、丹念な職人の仕事を見ることができます。
ポイント3 ここが凄い!確執
『バーフバリ』では、いくつもの確執や人間関係の難しさもテーマのひとつ。聖書に描かれたカインとアベルのころから、兄弟同士の争いは何度も描かれてきました。特に、誰が王になるのか、王家を賭けた争いとなると話は壮大になってきます。
兄弟同士の争いだけでなく、嫁姑の意見の衝突となると問題は複雑化。その嫁姑の争いは王座の争奪戦に直接的に関わってきます。ひとつの不和が次の衝突を生み、それが波のように襲ってきて悲劇につながっていく。兄弟間、嫁姑、部下と上司など、わたしたちにも見に覚えがありそうな身近な問題が、大規模な国家問題に発展していくところに面白さ集約していきます。
ポイント4 ここが凄い!主役のバーフバリの魅力
前作の『バーフバリ 伝説誕生』は、シヴドゥの物語。彼は自分の生まれを知らず、ただなぜかわからないまま、滝の上の世界に何があるのか、無意識に憧れてその方角に向かっていきます。囚われの元王妃デーヴァセーナを助けに行くのも、愛する女戦士アヴァンティカの役に立ちたいがため。その途上でひょんなことから彼の顔を見た労働者が「バーフバリだ」と思わず声をあげ、その声は、首都をとどろかすほど大音声となって広がっていきます。
バーフバリとはどんな人物なのか。今は生きているのか、いないとしたならなぜなのか。なぜデーヴァセーナは囚われているのか。その謎を解いていくのが完結編の『バーフバリ 王の凱旋』です。
期待が大きい分、生半可な人物では観客はがっかりしてしまいます。ですが、完結編で本格的に登場してくるバーフバリは、想像以上の存在感。律儀さと美徳と知性と勇猛さ。さらに愛情とユーモアとを併せ持つなんて普通は嘘臭く感じてしまうもの。それをちゃんとスクリーン上で表現し尽くしているのです。
ポイント 5 ここが意外!実は、ある映画とラストシーンが同じ
『バーフバリ』を見ていると、いくつもの有名なハリウッド映画を思い起こします。たとえば、『グライディエーター』、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ、『ホビット』シリーズ、『グリーン・ディスティニー』などの歴史ロマンやファンタジー大作。最近の映画なら、『グレート・ウォール』劇場の熱気は、同じような轟音映画上映が行われた『マッドマックス 怒りのデス・ロード』など。
製作された国が違うので直接的な影響を受けているとは思えませんが、過去の様々な大掛かりな映画と似ている点もあるけれど、そういう映画以上に楽しませてくれるのが『バーフバリ』なのだと思います。
ところで蛇足になりますが、同時期に公開された映画と、ラストシーンがとても似ているのに気づいた人はいるでしょうか?
よくあるラストとはいえません。ユニークなシーンでもあります。その映画は『羊の木』。
どちらも巨大な何かが落ちてくるのです。そしてひとつのほうは、落ちてくるものが重大な結果をもたらし、もう片方は、重大な結果として落ちてくる違いはあります。もちろん、ラストシーンが似ているのは、偶然としか言えません。映画の世界にはそんな面白い偶然がたくさんあるのかもしれません。
2018年2月現在、『バーフバリ』はまだ公開中です。劇場で熱い雰囲気を味わうのも楽しい経験になるのではないでしょうか。
(オライカート昌子)
バーフバリ 伝説誕生 あらすじ
年配の高貴そうな女性が兵士に追われ、自ら川へ入っていく。そして自らの命を捨て、代わりに赤ん坊の命を救うように神に祈りながら、手を伸ばし、赤ん坊を助けるのだった、赤ん坊は近辺の村の家族に引き取られシヴドィと名づけられた。成長したシヴドゥは、滝上の世界に大きく心惹かれたが、どうしてもそこにたどり着くことは出来ない、そんなある日、滝の上から仮面が落ちてくる、その持ち主に一目会いたいと願う心の力で、彼はついに滝の上の世界にたどり着き、仮面の持ち主、美しい戦士、アヴァンティカに出会う、
恋に落ちるが、アヴァンティカには、使命があった、それは悪辣な暴君バラーラデーヴァに囚われている元王妃のを助け出すこと。アヴァンティカを助けることにしたシヴドゥは、戦いの中で、自分の正体を知ることになる。
一旦囚われの王妃を救い出した、シヴドゥたちは、シヴドゥの父、バーフバリの親友であり奴隷でもあったカッタッパから、衝撃の告白を受ける。そしてバーフバリの物語を聞くこととなる。
バーフバリ 王の凱旋 あらすじ
バーフバリは先王の子として生まれ、先代の弟ビッジャラデーヴァの妻、シヴァガミの子バラーラデーヴァの弟として同様に育てられた。彼らはたくましく育ち、王家の実権を握っていたシヴァガミは、侵略してきた敵、カーラケーヤの首を取った息子の一人に王権を託すことを決断する。結局、戦いで敵を倒したのは、バラーラデーヴァだった。しかし、民を救う心があるのは、バーフバリの方であると、シヴァガミは言い渡す。王として戴冠する前に、バーフバリはいろいろな世界を視察するために、カッタッパを伴に身分を隠して旅に出るが、そこで出会ったクンタラ王国の姫デーヴァセーナに一目ぼれする。
母が次の王としてバーフバリを選んだことに納得をしていないバラーラデーヴァは、母がバーフバリの恋心を知らないのをいいことに、デーヴァセーナに結婚を申し込みたいと母に頼み、シヴァガミはそれを了承する。バーフバリはそれを知らなかったところから、シヴァガミとの間に亀裂が入ることに、そこから彼の運命は反転していく。
バーフバリ 王の凱旋
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配給:ツイン
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