2018年公開映画ベスト10(5×2)内海陽子編

                            

外国映画ベスト5

「弱腰のくせに泣き寝入りは我慢ならないという、わが性格ゆえ、復讐ドラマ①と②を非常に好む。どちらをトップに置くか迷ったすえ、賢明かつ狡猾なヒロインがすばらしいサスペンスを醸し出す②より、①の、直截で熱い血を感じさせる武骨なヒロインの苦闘を選んだ。映画は激しい魂を描いてくれるもの、という思いをさらに深めた。③は、庶民的ヒーローに実体験を再現してもらったら、久々にクリント・イーストウッド監督らしいヒューマン・アクションが生まれたところに昂揚する。④は、解決不能な問題が山積する地で人助けに精出す中年男たちのむなしさ、やるせなさに思いがけない強い共感を覚える。⑤は、家族の間の難問を“精神疾患”という切り口も鮮明に、うしろ向きに描く姿勢が画期的で怖ろしい。つまるところ、激しい魂は女に宿る、いい女優に宿ると信じる」

1位 女は二度決断する

『女は二度決断する』映画対談

2位 スリー・ビルボード

3位 15時17分、パリ行き

4位 ロープ/戦場の生命線

『ロープ 戦場の生命線』映画レビュー

5位 ヘレディタリー/継承

(C)2018 Hereditary Film Productions, LLC

『ヘレディタリー/継承』映画鼎談

日本映画ベスト5

「国際映画祭で受賞した作品に飛びつくのは素人で、一人前の映画ファンなら、自分の生まれた国の映画くらいは自分で発見したいもの。年明けに惚れこんで心変わりしなかった、抜きんでた群像ドラマ①。軟弱なヒーロー、錦戸亮の抑制の利いた表情がしなやかで、映画の幹のようになっている。松田龍平は、主演をつとめた敗者復活戦ドラマ④もむろんいいけれど、断然①の助演が無気味で光る。昨年末の公開で心奪われて主演女優賞に、と心に決めた②の松岡茉優。奥手で自己中心的でコケティッシュ、というところがまさにヒロインだ。年を重ね、たくさんの俳優を見てきてもなお、新しい驚きを与えてくれる人がいることの幸せをかみしめる。③の大杉漣が消え去った後の喪失感は癒えないが、⑤の、困難を恐れず果敢に進む大泉洋の健在は、極上のカイロのようにありがたい」

1位 羊の木

『羊の木』映画対談