「ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋」レビュー

「羽田がハブ空港なら、成田はマングース空港と言いたい」笑

(ハブ対マングースは、マングースの勝ち)

コレ、ある知事の記者会見コメント。

きっと、スピーチライターの原稿に違いない。

あの人にこんなユーモアセンス無いからね。

映画の主人公は強気の理想主義が仇となり、ライター職を失ったフレッド。

でも、フレッドが書く原稿は、

人を惹きつけるユーモアと誠実さに溢れていた。

冒頭のハブ対マングースのような、笑いとつかみの持ち主。

一方、アメリカの次期大統領候補がシャーロット。

彼女は、ユーモアに溢れ才能あるスピーチライターを探していた。

今後、世界各国遊説先でトップ・ニュースになるような

インパクトあるスピーチが必要となるからだ。

実はこのふたり、幼馴染で、フレッドにとってシャーロットは初恋の人だった。

当然、シャーロットのためにフレッドはひと肌もふた肌も脱ぐ覚悟。

ひと時も離れることなく、速射砲のごとくスピーチ原稿を連打していく。

はたして、憧れの女性をアメリカ大統領にすることはできるのか!

やがて、華やかに映る政界のウラで

ふたりはトンデモナイ陰謀に巻き込まれていくのだった。。。

映画「ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋」は、

才色兼備の大統領候補とそのスピーチライターが繰り広げるラブコメだ。

私たちは、この失業中で冴えない太っちょオヤジが、

コンパスのような美脚を持つエリート美女と首尾よくキスができるかを

固唾を呑んで見守ることとなる。

誰が言ったか、『プリティ・ウーマン』の男女逆転版とある。

ならばクライマックス、お姫様抱っこでキスはできるのか。

チラシには「年明け早々、笑って、恋して、大興奮!」とある。

ならばハグぐらいはできるのか、いやいや平手打ちを食らうのか。

それは年明け早々皆さんの目で確かめていただきたい。笑

シャーロット役は、あのシャーリーズ・セロン。

シリアス、ホラー、アクションと幅広い役どころを巧みに演じてきた。

この「アカデミー女優」が、見事なコメディ・センスを披露してくれる。

太っちょスピーチライターのフレッドに扮するのは、

泣く子も黙る、(いや泣く子も笑う)セス・ローゲン先生!!

『40歳の童貞男』(05)、『無ケーカクの命中男 ノックトアップ』(07)

といったダサい邦題で、日本ではイマイチ知名度の低いコメディアンだ。

これまた、チョー最低な邦題『スーパーバッド 童貞ウォーズ』(07)も

傑作なので必見! (脚本もセス担当なのでこれは是非モノです)

そのマルチな才能と大スターぶりを楽しんでほしい。

この「ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋」では、

その持てるコメディーセンスが遺憾なく発揮されているからね。

今回、セスとセロンのふたりはこの映画の製作に名を連ねるだけでなく、

5年にわたって脚本の練直しにも参加するほど、この企画に惚れ込んだらしい。

劇中、真面目な顔つきで、

「テレビから映画に転向してスターになったのは、

ウディ・ハレルソンとジョージ・クルーニーしかいない」

「いや、もう一人、ジェニファー・アニストンがいる」

なんてセリフが2度にわたって繰り返される場面は

これまたテレビ出身のセス・ローゲンらしい自虐ネタだ。

「おっと忘れちゃ困るぜ。俺もその仲間だよ」と言いたげな仕掛けだが、

このセリフもふたりのアイデアだったのかなぁ。

余談だけど、劇中の現大統領もテレビ役者出身という設定。

怠慢ナルシストな大統領はどこか風刺にも通じて、ストンと腑に落ちる。

終映後、帰りのエレベーターの中で、

「ジュリア・ロバーツの『ベスト・フレンズ・ウェディング』や

『ノッティングヒルの恋人』に並ぶぐらい好きな映画だったわ」

と盛り上がっていた。

なるほど、と私は『ローマの休日』を思い出してニヤリ。

さすがにこれはオーバーな言い回しだけど、

「この映画が楽しめないオトコとは付き合いなくないわぁ」という感想には

妙な気持ちで、大賛成! 

世論を味方にユーモアに満ちた的確な遊説で世界を駆け巡る身分違いのふたり。

ロシア、スウェーデン、ベトナム、スペイン、ポルトガル、フィリピン、

コロンビア、アルゼンチン、カナダ、、、、

最後の最後まで日本は蚊帳の外だったけど仕方ないね。

こんな悔しさも感じられる映画だけれど、

新たな年を笑顔で迎えられる、快作であることは確かだ!

モンダイは誰と見るか、だ。

下ネタも満載なのでご注意いただきたい。笑

(武茂孝志)

「ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋」

2020年1月3日(金)より、TOHOシネマズ日比谷 ほか全国ロードショー

監督:ショナサン・レヴィン
(『50/50 フィフティ・フィフティ』『ウォーム・ホティーズ』)
脚本:ダン・スターリング、リズ・ハンナ
(『ぺンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』)
原案:ダン・スターリング
出演:シャーリーズ・セロン、セス・ローゲン、
オシェア・ジャクソン・Jr、アンディ・サーキス、
アレクサンダー・スカルスガルド
原題:LONG SHOT/2019/アメリカ/カラー/英語/上映時間:125分/シネマスコープ字幕翻訳:アンゼたかし/5.1ch/PG12
配給:ポニーキャニオン 提供:ポニーキャニオン/アスミック・エース
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公式サイト:http://longshot-movie.jp