アニメ出身監督が織り成す一つ一つの動きの美しさに注目したい
『ミッション:インポッシブル』シリーズといえば、テレビのオリジナルシリーズより、”スター”トム・クルーズ主演映画のイメージのほうが強かった。イーサン・ハントの孤軍奮闘映画で、派手なアクションと、窮地に陥ってもなんとか逃れ、最後は勝利をつかむのがパターン化されていた。
ところが、今回の4作目『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』は違う。イーサン・ハント=トム・クルーズは一歩後ろに下がり、チームプレーに徹している。目立つとしたら、チームの統率者として、あるいは、アクションシーンの圧倒的な量で。
会話とお笑い担当で目立つのは、元プログラマーで今回は現場勤務に昇格したベンジー(サイモン・ペッグ)だ。存在感で異彩を放っているのは、次世代トップスターの座をほぼ完全に手中にしているジェレミー・レナー演じるブラント。チームの中の紅一点、カーターの個性も魅力的。
アクション以上に4人のやり取りや、人間関係が面白い。ところが、イーサン・ハントの人間性やストイックさは、孤軍奮闘していたときよりも伝わってくるのだ。それは、トム・クルーズが一皮向けて、実力が上がったせいかもしれないし、監督の演出力もあるだろう。
監督といえば、『アイアン・ジャイアント』、『Mr.インクレディブル』、『レミーのおいしいレストラン』などアニメ映画で評価が高いブラッド・バード監督が指揮している。そのせいか、今までの実写映画ではなかなかないような、アニメ並みのアクションデザインを見ることができる。
超高層ビル”ブルジュ・ハリファ”での壮絶スタントシーンもだが、それ以上に面白かったのが、インドの場面で、ジェレミー・レナーが一人で行うアクションシーンだ。ジェレミーの姿の良さとキレが美しく表現されていた。見惚れてしまうほどだった。
アニメでは登場人物の内面を表現する方法は声と動きだけ。アニメを極めたブラッド・バード監督の動きに対する意識がそれだけ高いということなのだろう。『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』は、単なるアクション映画として見るにはもったいない。様式美的に凝った動きの一つ一つを楽しみたい映画だ。(オライカート昌子)
ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル
2011年 アメリカ映画/132分分/監督:ブラッド・バード/出演: トム・クルーズ(イーサン・ハント)、ジェレミー・レナー(ブラント)、サイモン・ペッグ (ベンジー)、ポーラ・パットン(カーター)、ミカエル・ニクヴィスト、ウラジミール・マシコフ、ジョシュ・ホロウェイ、アニル・カプール、レア・セドゥーほか/配給:パラマウント
2011年12月16日(金) TOHOシネマズ日劇ほか全国超拡大公開
オフィシャルサイト http://www.mi-gp.jp/