(C)2013 Paramount Pictures. All rights reserved.
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ウルフ・オブ・ウォールストリートは不思議な映画だ。見た直後は、呆気にとられた。スクリーンから延々と放たれるエネルギーのおかげで気持ちが麻痺してしまったようだった。

ところがそれが、いつの間にか忘れられない映画に変わってくる。きれいごと抜きで人間の欲望の生の姿を強調しているところに理由があるのかもしれない。

この映画は、ジョーダン・ベルフォードという人物に起きた実際の出来事であり、ディテールもそのままということだ。だから演じる方も、恥ずかしさや躊躇を乗り越え、どんなことでも描いてやるという心構えで作っているのだろう。

ウォールストリートで成り上がった男の栄光と転落を描く本作は、マーティン・スコセッシがかつて描いていた『グッドフェローズ』などのマフィア映画の金融版となっている。

仲間の帰属意識を強めるのは、マフィア的暴力ではなく、ヤッピーたちの破天荒な遊びだ。でも自分を守るためには裏切りもある。宴の後のわびしさは、遊びが規格外だった分、ひとしおだ。

レモンのせいでフェラーリをポンコツにしてしまうところや、社内のお祭り的大騒ぎなど、印象が強いシーンはいくつもあるけれど、なんといっても一つだけ上げるなら、ウォールストリートの夢見る新米だったジョーダン・ベルフォードが、先輩に食事をおごられるランチの場面だ。

その後の映画のカラーを一気に決めてしまうシーンでもあり、ハミングと職業倫理に泥をぬりまくる心得が披露される。個人的には、今のハリウッドの頂点に君臨しようとする二人の俳優、レオナルド・ディカプリオとマシュー・マコノヒーが揃う豪華さに目がくらんでしまった。

ウルフ・オブ・ウォールストリートは、今までのいわゆるいい映画とは趣が違う分、賛否両論があって当然だ。だが映画は型にはまったものではないし、歯ごたえがいいものばかりでもない。

毒をコメディ的ノリに包み込み、享楽を延々と描いたこの作品は、どこか違う時代の違う世界で生まれたような不思議な感覚を味あわせてくれる映画なのだ。
(オライカート昌子)

ウルフ・オブ・ウォールストリート ジャパン・プレミア来日レポート

ウルフ・オブ・ウォールストリート

2013年 アメリカ映画/サスペンス・伝記・コメディ/179分/原題:THE WOLF OF WALL STREET/監督:マーティン・スコセッシ/出演・キャスト:演:レオナルド・ディカプリオ (ジョーダン・ベルフォート)、ジョナ・ヒル(ドニー)、マーゴット・ロビー(ナオミ)、マシュー・マコノヒー マーク)、ジョン・ファヴロー(マニー)、カイル・チャンドラー(パトリック)、ロブ・ライナー(マックス)、ジャン・デュジャルダン(ジャン=ジャック)ほか/配給:パラマウントピクチャー・ジャパン
1月31日より新宿ピカデリー他全国公開
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』公式サイト