実話は、時にフィクションより壮大。波乱万丈で、ワクワクさせる。『マシンガン・プリーチャー』もそんな実話の映画化だ。題名は、マシンガンを持った伝道者という意味。
主演はジェラルド・バトラー。最初は、てっきりプリーチャーをクリーチャーと思い込み、モンスターと戦う映画だと思っていた。それは大間違いだったけれど、この映画、よくできたアクション映画以上にドラマチックでスケールが大きい。
主人公のサム・チルダースは、酒とドラッグにまみれたバイカーだった。ストーリーは、刑務所から出所するところから始まる。そのときのサム・チルダースは、身体も心も弛みきっている。
彼の妻を演じるのは、お姉さま的キャラで好感度抜群のミシェル・モナハンだ。最近でも『ミッション: 8ミニッツ』、『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』で、涼風のような存在感を見せてくれていた。この映画ではやさぐれた元ヌード・ダンサーを力演している。
妻のリンは、夫が刑務所にいる間に外面はともかく、内面は信仰者となっていた。驚いたサムだったが、彼の自堕落な生活は止まらない。抜き差しならない事態を引き起こすまで。そこで彼もまた信仰者として生まれ変わる。
生まれ変わるだけでなく、どんどん進化していく。建設会社を起こし、成功。アフリカでのボランティアまで引き受ける。物見遊山で訪れたスーダンで、悲惨な子供たちの現状を目撃したことがきっかけとなり、再び彼の人生は転変していく。スーダンの子供たちを救うために、全身全霊を捧げるようになる。
スーダンの子供たちを巡る現実は限りなく重い。その事実に衝撃を受けたとしても、そのために行動を起こそうとする意思を持つ人はほとんどいないはずだ。
必要に迫られてマシンガンを持つサム・チルダースをを非難する人が多いにしても、彼の行動の軽やかさと、意思の純粋さに異論を唱える人はいないだろう。
マーク・フォスター監督は、事実の持つ衝撃を、損なうことなくエンターテイメント作品として生まれ変わらせた。サム・チルダースという男の欠点も多いけれど気概のある生き方は、いつまでも心に残る。 (オライカート 昌子)
マシンガン・プリーチャー
2011年 アメリカ映画/109分/監督:マーク・フォースター/出演:ジェラルド・バトラー(サム・チルダース)、ミシェル・モナハン(リン・チルダース)、マイケル・シャノン(ドニー)、キャシー・ベイカー(デイジー)、スレイマン・スイ・サヴァネ(デン)ほか/日活配給
2012/2/4(土)ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー
公式サイト http://mgp-eiga.com/