
『ラスト・ブレス』は、タイムリミット要素もある極限サバイバルスリラーであり、実話の映画化。実話でしかありえないラストの衝撃がある。フィクションでは決して描くことのできない、実話の凄さには驚くほかない。
『ラスト・ブレス』を手がけたアレックス・パーキンソン監督は、実話のもとになった事件を2019年にドキュメンタリー映画『最後の一息』として発表している。『ラスト・ブレス』は俳優を使った劇映画として、全米初登場2位の成功作となった。ちなみに実際に事故が起こった船、タロス号で撮影。ドキュメンタリー映像も交えている。リアリティをとことん追求している。
地球上で最も危険を伴う職業”のひとつと呼ばれている飽和潜水士。飽和潜水士は、深海300メートル下まで潜水することが可能で(現在は700メートル)、張り巡らされたパイプラインや通信ケーブルの補修や交換などを海中で行う。『ラスト・ブレス』の場合は海中91メートルの深さで作業を行う。飽和潜水士のメインの三人は、ベテランのダンカン(ウッディ・ハレルソン)、達人デイヴ(シム・リウ)、若手のクリス(フィン・コール)。
『ラスト・ブレス』で描かれるプロの作業を見ているのは快感だ。準備手順と遂行は厳密で美しい。ただし、どんなに安全に留意していても、不確定要素はつきまとう。『ラスト・ブレス』では、起きるべきではないことが起きる。緊張感の高まりと持続性に圧倒させられる。93分間、心臓は鷲掴みにされたようだ。
それほど危険な仕事なのに、海中の美しさ素晴らしさが彼らを手放さない。ダンカンは、退職を目前にしている。それが寂しくてたまらない。そんな彼の言葉に感動してしまった。「やみくもに登るな。うねりに従え。ベルが下がれば登り、逆ならつかまっていろ」。まるで人生の極意のようだ。『ラスト・ブレス』は、緊張とスリルと水中アドベンチャー。そして珠玉の仕事映画としても見ごたえがある。
ラスト・ブレス
9 月26日(金)より、新宿バルト9ほか全国ロードショー
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キノフィルムズ
出演:ウディ・ハレルソン、シム・リウ、フィン・コール、クリフ・カーティス
監督:アレックス・パーキンソン 原作:ドキュメンタリー『ラスト・ブレス』(メットフィルム)
脚本:ミッチェル・ラフォーチュン、アレックス・パーキンソン&デヴィッド・ブルックス
2025 年|米・英|英語|93分|カラー|5.1ch|シネマスコープ|原題:Last Breath|字幕翻訳:大西公子|映倫
区分:G