
レア・セドゥの美しさに圧倒されてしまった。『けものがいる』では、彼女の容姿と演技をじっくり堪能できる。レア・セドゥは、ガブリエルという女性を、三つの時代の三つのストーリーで演じ分けている。2044年のパリのガブリエルが基点。残りの二つ、1904年のパリ、2014年のロサンゼルスは、彼女の前世で起きたことだ。
『けものがいる』を見たかった一番の理由は、レア・セドゥではなく、彼女の相手役、ルイを演じるジョージ・マッケイだった。『FEMME フェム』で演じたプレストンが、あまりにも素晴らしかったせいだ。
『けものがいる』でのジョージ・マッケイは、レア・セドゥの演技を受ける側に徹している。演じているルイという男性も、三つの時代で変化している。繊細な演じ分けには感動した。けれど、映画は始めから終わりまでレア・セドゥが中心だ。
ファッショナブルで不思議な無機質感が漂う2044年のパリ、35ミリフィルムで撮影し歴史ものの重厚感と浮遊感がある1910年のパリ。今と地続きだけど、変化も感じられる2014年のロサンゼルス。その三つの世界で、SF・ロマンス・ミステリー・スリラーが、シームレスに奏でられる。別々に紡がれるわけではなく、スタートと結末は同時進行だ。
それぞれが心をつかんで離さない。どのストーリーにも驚きの結末が待っている。
監督は、『SAINT LAURENT サンローラン』『メゾン ある娼館の記憶』などでカンヌ国際映画祭コンペティション部門に3度選出された実績を持つベルトラン・ボネロ。『けものがいる』は、今のフランスの最先端の映像体験だ。
ところで、”けもの”とは何なのか。映画は、イギリスの小説家ヘンリー・ジェームズの中編「密林の獣」を翻案している。レア・セドゥ演じるガブリエルにつきまとう不安や、彼女が浄化しようとしている感情の比喩なのか。ぜひ自分の目で見て確かめて欲しい。
けものがいる
©Carole Bethuel
©FILM : 2022 -LES FILMS DU BÉLIER -MY NEW PICTURE -9459-5154 QUÉBEC INC. -ARTE FRANCE CINÉMA -AMI PARIS -JAMAL ZEINAL-ZADE
公開表記4/25(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
第80回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門正式出品第68回バリャドリッド国際映画祭最優秀女優賞受賞
監督・脚本・音楽:ベルトラン・ボネロ
『SAINT LAURENT/サンローラン』ヘンリー・ジェイムズ「密林の獣」を自由に翻案
共同プロデューサー:グザヴィエ・ドラン
出演:レア・ぜドゥ『デューン砂の惑星PART2』、
ジョージ・マッケイ『1917 命をかけた伝令』、
ガスラジー・マランダ『サントメールある被告』、
グザヴィエ・ドラン(声)『マティアス&マキシム』
原題:La bête/2023年/フランス・カナダ/ 仏語・英語/ビスタ/5.1ch/
146分/字幕:手束紀子/
配給:セテラ・インターナショナル