『フォールガイ』映画レビュー アクション礼賛とカロリー高めの映画愛

『フォールガイ』は、アクション賛美映画だ。華麗かつ綿密なアクションに加え、映画の内幕ストーリー、謎が謎を呼ぶ展開、恋愛模様もプラスした、豪華絢爛な痛快映画となった。

『フォールガイ』の監督は、デビッド・リーチ。スタントマンとしてブラッド・ピットやジャン=クロード・ヴァン・ダムのボディダブルを演じてきた。


香港映画界の『スペクターX 』や、『友は風の彼方に』のリンゴ・ラム監督の演出術を学び、監督に進出。『アトミック・ブロンド』、『デッドプール2』、『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』、『ブレット・トレイン』など、アクション映画を背負う存在にまでなった。『フォールガイ』は元スタントマンが作るスタントマンの映画なのだ。

『ジョン・ウィック』シリーズでは、クレジットはされていないものの、1作目の監督を、チャド・スタエルスキ監督と共同で勤めた。クレジットされていない件の詳しい経緯は知らないけれど、音楽の世界のバンド活動で、方向性違いの脱退があるように、映画監督の世界でも、自分のカラーを貫くための方針の違いがあって当然だ。

チャド・スタエルスキ監督の『ジョン・ウィック』シリーズは、シリアスでストイックなタイプのアクション賛美映画。それに比べると、デビッド・リーチ監督のアクション映画は、コメディ、恋愛、ドタバタ、ヒューマンなど、あらゆる面白さも詰め込んで、映画愛を強く感じさせる映画が多い。アクション映画ファンなのか、映画ファンなのか、そのあたりに、チャド・スタエルスキ監督との個性の違いを感じる。

『フォールガイ』は、スタントマンや映画の世界を知り尽くし、愛し尽くした監督でないと作ることができない映画に思える。それは、アクション俳優というよりは、演技派や個性派として名高い、ライアン・ゴズリングやエミリー・ブラントの起用からも、うかがえる。

ライアンとエミリーの、リアルで繊細、そして柔らかな演技は、優れた演技術を持っている俳優にしか出せない味で『フォールガイ』のアクションを際立たせている。

同時に、ライアン・ゴズリングとエミリー・ブラントの持つ映画世界のヒストリーは、映画に豊かな香りをプラスする。『デッドプール2』でジョシュ・ブローリンを起用し、『アベンジャーズ』シリーズの香りを振りまいたように。

犬の活躍は、『ジョン・ウィック』一作目のリベンジでもあり、『ジョン・ウィック』シリーズ4作目、『ジョン・ウィック:コンセクエンス』とまったく同じ役割だった。

映画愛を貫くために、詰め込み過ぎたかなという面もある。あの分割場面は、果たして必要だっただろうか。強い愛は、時にカロリー高めだ。

(オライカート昌子)

フォールガイ
8月16日(金)より、全国ロードショー!-
©2024 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.
配給:東宝東和
CAST:ライアン・ゴズリング:コルト・シーバース
エミリー・ブラント:ジョディ・モレノ
ウィンストン・デューク:ダン・タッカー
アーロン・テイラー=ジョンソン:トム・ライダー
ハンナ・ワディンガム:ゲイル・メイヤー
テリーサ・パーマー:イギー・スターステファニー・スー:アルマ・ミラン

監督:デヴィッド・リーチ製作:ケリー・マコーミックデヴィッド・リーチガイモン・キャサディライアン・ゴズリング製作総指揮:ドリュー・ピアースセシル・オコナージェフ・シーヴィッツ脚本:ドリュー・ピアースユニバーサル映画/原題:THE FALL GUY/2024年/アメリカ/上映時間:2時間7分スコープ・サイズ/字幕翻訳:林完治/吹替翻訳:野口尊子/字幕監修:谷垣健治