野蛮なやつら/SAVAGESの画像
(C)Universal Pictures
『野蛮なやつら/SAVAGES 』は、ドン・ウィンズロウ原作作品をオリバー・ストーン監督で映画化。ドン・ウィンズロウといえば、旬のミステリー作家として日本でも人気が高い。私も大好きな作家なので、映画化作品はどうなるんだろうという期待も大きかった。

オリヴァー・ストーン監督は、それを映画でしかできない表現で料理してみせた。ドン・ウィンズロウ、なんのそのの自信がうかがえる。スタイリッシュで軽快。かつ残酷な犯罪サスペンスとなった。

中心になるのは若手二人。昨年『ジョン・カーター』や『バトルシップ』で頭角を表したテイラー・キッチュが、元特殊部隊の切れ者チョンを演じ、これから公開の『アンナ・カレーニナ』でアンナと恋に落ちるヴロンスキー役のアーロン・テイラー・ジョンソンは、平和主義の植物学者ベンを演じる。二人と共に住み、二人を愛しているオフィーリアを、ブレイク・ライブリーが演じている。

世界最高峰の品質を持つ”はっぱ”を開発したことで、百万長者となったチョンとベンの二人は、理想的で気ままな生活を送っていた。そこに二人を支配下におこうとするメキシコの麻薬組織が触手を伸ばしてくる。

野蛮なやつら/SAVAGESの画像
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二人はいったんすべてを精算して逃げることを試みたが、サルマ・ハエック演じる麻薬組織のボスが、二人の弱点をオフィリーリアだと見ぬいて、誘拐。

そこから、二人と麻薬組織の争いは、チェスの一手で局面が変わっていくように、厳しい決断と選択の物語となっていく。平和を愛するベンも、その戦いの最中に、手を汚すことも厭わない人間に変わる。

のほほんと平和に生きてきた若者が現実の荒波に揉まれていくうちに、無垢な自分を失っていくストーリーなのだ。そしてそこには、とっくに高尚な理想も純粋さも失った、大人たちがいる。

蛮なやつら/SAVAGESの画像
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野蛮なやつらとは、理想を忘れて蛮行に耽る大人たちかもしれないが、麻薬組織のボスでもあり、母でもあるエレナから見ると、一人の女と二人の男が一緒に住んでいることの方がずっと野蛮なことらしい。考え方は立場によって変わる。

映画のラストには、小細工的仕掛けがある。昨年の暮に公開された映画に、全く同じような仕掛けがある映画があった。その映画は、多分そのために評価がいまいちだった気がする。

野蛮なやつら/SAVAGESも、この映画の終わり部分の仕掛けを、是とするか非とするかで評価が変わるに違いない。わたしは、映画を面白くしてくれるなら、なんでもあり派だから、仕掛けは大いに賛成だ。(オライカート昌子)

野蛮なやつら/SAVAGES
2013年3月8日(金)TOHOシネマズ みゆき座他全国ロードショー
オフィシャルサイト http://yabanna-yatsura.jp/