『グレイテスト・ショーマン』映画レビュー

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『グレイテスト・ショーマン』を見ながら改めて思ったことは、人を幸せにすることに大きな存在価値があるのがミュージカル映画のほとんどだということ。そういう風に人生を祝福している映画は、業界のみならず、世界の一角を照らしている。

グレイテスト・ショーマンでは、1910年の伝説的なショーマン、P(フィニアス)・T・バーナムの人生を主軸に、人の見かけや身分の違いを超えて、活き活きと生きることの大切さが描かれる。艶やか華やかに、パワーのある歌と踊りは、特別な時間を提供してくれる。時を止め、憂いや悩みを一気に消し去る力がある。

フィニアスは、仕立て屋の息子として生まれたが、上流階級生まれの少女、チャリティと恋に落ちる。だがまもなく、幼くして家族を失い、彼はストリートキッズとして生きていくことに。ひとときたりとも初恋の人、チャリティのことを忘れたことのなかった彼は苦労を重ね、ついに彼女と結婚。彼女を幸せにしたいと強い願いを持ち続け、エンターテイメントの世界に革命を起こす。夢を追い求め、実現させていく。


後半は、その後のストーリーだ。フィニアスの場合は、人を見返したい強い思いが、さらなる行動を起こさせる。彼を認めない新聞記者、上流階級の妻の家族。栄光を追い求め、もっと認められたいと強く願う。

なんて人間的なんだろう。承認欲求が人一倍強いことに気づいたばかりの私にも無関係なテーマじゃないなと、ぐっと前のめりになってしまった。

どう思われてもいいじゃない。人に認められることよりも大切なことの方が多いんだよ。それは、自分が好きなことができる自由、愛する人々と一緒にいられること、家族。それをフィニアスの周囲の人々は彼に気づいて欲しいと願う。

フィニアスとは比較できないほど苦しい目にあってきて、日陰で暮らしていくことを強いられてきた彼の仲間たちが歌う「This is Me」のシーンは、一番の見せ場だ、最高に効果的に提示される。

この作品の面白さは、テーマの二段構えなんだ。夢は現実になる。でもその後も克服すべき事態は、次から次へと襲ってくる。繰り返し訪れてくる悪状況はノックのようにやってくる。でもそれは、人生の祝福すべき面白さのひとつなんだと、この作品は訴えかけてくる。

さらに付け加えたいのは、ヒュー・ジャックマンの力量と存在感の素晴らしさ。いつまでも聞いていたい伸びやかな歌声。『レ・ミゼラブル』を超え、ミュージカルスターとしての円熟期にある彼の魅力は、さらに大きく輝いている。

(オライカート昌子)

グレイテスト・ショーマン
(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation
公式サイト http://www.foxmovies-jp.com/greatest-showman/