今月から内海もランキング選考に参加します。あくまで独断によるものですから、お口に合わない場合はご容赦のほどを。
『ハロー!?ゴースト』
6月9日(土)より新宿武蔵野館にてロードショーほか全国順次公開
韓国のファミリー・コメディー。幽霊になっても(なったからこそ!)ねちっこい、かの国の庶民の愛情表現を味わっていただきたい。たとえ幽霊たちが叱咤激励しても、主人公自身にやる気がなければことは少しも進まない。つまり人生を切り開くのはいつも自分自身である、というきわめてまっとうな物語。それを明るくトリッキーに展開するサービス精神を讃えたい。
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『キリマンジャロの雪』
2012年6月9日(土)より、岩波ホールほか全国順次公開
フランスのヒューマン・コメディー。わが盟友、増田統氏の神経の行き届いたレビューをお読みいただければ十分だが、ひとつ付け加えたいのは、女優リリアンヌ・アスカリッドのこと。ロベール・ゲディギャン監督の奥方ゆえ、あらゆる作品に登場するのはやむをえないが、いじわるな女の目には“でしゃばり”に見えていた。本作ではようやく“ふつうのおばさん”の椅子に座ったようで喜ばしい。ラフな普段着姿が好ましく、たわむれにダンスをすればリズム感があって達者であり、粋なバーテンダーとの掛け合いに中年の色香がふんわり漂う。彼女の演技の穏やかさが、主人公の人間性をさりげなくバックアップし、物語の重心になっている。
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オフィシャルサイト http://kilimanjaronoyuki.jp/
『アメイジング・スパイダーマン』
2012年6月30日(土)より、TOHOシネマズ日劇ほか世界最速3D公開
アメリカの3Dアクション大作。主人公を『ソーシャル・ネットワーク』のアンドリュー・ガーフィールドが、その恋人を『ヘルプ~心がつなぐストーリー~』のエマ・ストーンが演じて新鮮味をふりまく。ガーフィールドの長い手足とクセのある顔立ちが想像以上にスパイダーマンに似あう。彼の叔母さん役でベテラン、サリー・フィールドの姿が見られるのも長年の映画ファンにはありがたい。工夫を凝らした3D映像で描かれるスパーダーマンと巨大リザード(リース・イーヴァンズ)の対決は、ビルの谷間や地下水道の立体感にうれしいめまいを覚える。3D映像をさして好まないわたしでも、思わず「3Dは『スパイダーマン』のためにあった!」と口走ってしまうほど。続編をほのめかすラストシーンにも苛立ちを感じない。
アメイジング・スパイダーマン来日記者会見レポートを読む
オフィシャルサイト http://www.amazing-spiderman.jp/
『愛と誠』
2012年6月16日(土)新宿バルト9他全国ロードショー!
日本のミュージカル・ラブコメディー。素朴なアニメーションから始まる三池崇史版『愛と誠』は、『ウェストサイド物語』か『シェルブールの雨傘』か(お好みのほうをどうぞ)というミュージカル・タッチで進む。おそろしく思い込みの強いヒロイン、愛を演じる武井咲が評判どおり素晴らしいが、わがひいきの妻夫木聡が“超不良”の誠を演じるシーンでは、やはりいろいろ引っかかる。『悪人』のレビューで書いたことを繰り返すようだが、とにかく、彼の瞳は包容力と優しさにあふれており、拗ねた表情が似合わないのだ。これほどまでに一心に想いを捧げる愛を憎からず思うなら、素直に受け止めてまっとうに生きていくほうが自然に思える。わたしも愛に負けずに思い込みが強い…。
オフィシャルサイト http://www.aiandmakoto.jp/
『ハングリー・ラビット』
新宿バルト9ほか全国大ヒット公開中!
アメリカのミステリー・サスペンス。妻が暴漢に襲われたことがきっかけで、民間の“必殺仕置き人”組織に振り回されることになる高校の国語教師を描く。典型的巻き込まれ型ドラマで「人殺しなど俺には向いていない」と主演のニコラス・ケイジは突っぱねるが、おそらくすべての観客は「大いに向いている」と突っ込みたくなるだろう。ケイジが国語教師とは思えないけっこうなアクションを見せれば、『英国王のスピーチ』でエドワード8世を演じたガイ・ピアースがサディスティックな表情で彼をいたぶってなかなか好調。ラストの主人公と警部補のやりとり、「こんな筋書きが通用するのか?」「ニューオーリンズだからな」が、映画そのものの言い訳に聞こえるのもご愛嬌だ。
オフィシャルサイト http://hungry-rabbit.com/