21世紀に入りスピルバーグ監督の『A.I.』を経て『ツリー・オブ・ライフ』体験から映画がテクノロジーを駆使し哲学・物理 量子学の領域に踏み込んできたと感じました。映画というエンタメ芸術が年々進化しています。
そんな思いが頂点に達した2016年、ジャンル別という都合のいい仕分けで考えるに戦争映画『アイ・イン・ザ・スカイ』『ある戦争』『ヒトラーの忘れもの』といった秀作を生み、ホラー映画では『死霊館 エンフィールド事件』『31』『ロスト・バケーション』に驚かされました。
さてベスト10での1位、2位は映像美が抜きんでました。
「LGBT」差別 を核にした『ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気』を11位に置き、そして10、9位へと続きます……。
(2015年 イギリス=アメリカ=ドイツ映画/監督:トム・フーパー/出演:エディ・レッドメイン、アリシア・ヴィキャンデル)
アーティストの苦悩とトランスジェンダーの悲哀。マイノリティ故の生きづらさと愛の深さに号泣。儚くも美しいあの時代の愛の物語。
(2015年 イギリス=アメリカ映画/監督:トッド・ヘインズ/出演:ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラ)
魅力的な人に惹かれてゆくごく自然な感情。それが同性だというだけでハラハラさせられ悲劇的ですが時代の粋に心奪われ陶酔。ケイト・ブランシェット 素敵!
(2016年 ドイツ=フランス=ルクセンブルク映画/監督:フローリアン・ガレンベルガー/出演:エマ・ワトソン、ダニエル・ブリュール)
1973年に起きたチリ・クーデターの際の実話を基に作られた本作は『大脱走』の趣もあるハラハラドキドキの監禁~エスケープ・スリラー映画。サリンというワードが発せられ身の毛もよだちました。
(2015年 イタリア=フランス映画/監督:マッテオ・ガローネ/出演:サルマ・ハエック、バンサン・カッセル)
原作は、グリム童話の原点となった寓話だけに、痛烈なペーソスを纏ったダークなファンタジー。母になることを追い求め、若さと美貌を熱望し、まだ見ぬ 世界に憧れる…400年の時を経て、世界最初のおとぎ話は残酷なまでの女の“性(さが)”を描き出します。
⑥ PK
(2014年 インド映画/監督:ラージクマール・ヒラーニ/出演:アーミル・カーン、アヌシュカ・シャルマ)
我々は宇宙人だ! 盲目的な信仰心の危険性や信じることの大切さをパラレルに描き出す、度肝をぬかされたゴキゲンな一篇。
⑤ ハドソン川の奇跡
(2016年 アメリカ映画/監督:クリント・イーストウッド/出演:トム・ハンクス、アーロン・エッカート、ローラ・リニー)
アルコール依存症問題をからめた同テーマ作『フライト』(デンゼル・ワシントン主演)に感心したものですが、本作は実話をベースに人命優先とパイロットの英雄伝に仕立てています。深読みするとコンピューターが人間の判断を超える時がくるのかもと考えさせられる未来予言映画? 怖い、凄い。
(2015年 アイルランド=イギリス=カナダ映画/監督:ジョン・クローリー/出演:シアーシャ・ローナン、ドーナル・グリーソン)
二つの愛と故郷に揺れる女性の自分らしい生き方をスマートに選択していく人生の素晴らしさに泣けて嬉しくカタルシス。チャーミングで忘れられない作品。
(2015年 カナダ=アイルランド映画/監督:レニー・エイブラハムソン/出演:ブリー・ラーソン、ジェイコブ・トレンブレイ)
実際の事件を基に書かれた同名小説の映画化で、見知らぬ男に誘拐監禁された母と息子が脱出を図り……社会復帰するという二幕モノ。世界の広がりというテーマは「ビッグバンから宇宙の膨張」をミニマムに描いたかのよう。傑作!
(2015年 アメリカ映画/監督:テレンス・マリック/撮影:エマニュエル・ルベツキ/出演:クリスチャン・ベイル、ケイト・ブランシェット、ナタリー・ポートマン)
五感に触れるマリック作品は画を見ただけで涙がでます。 タロットカード‘KNIGHT of CUPS.’(原題)の正位置ではなく、逆位置の「移り気・不誠実・浮気性・遊び目的・軟派な男性・愛を信じられない・妥協・焦り」不安定で後ろ向きの気持ちが挫折や失敗につながるイメージが昨日までの自分だと映画を観て思っちゃいました。
① レヴェナント: 蘇えりし者
(2015年 アメリカ映画/監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ/撮影:エマニュエル・ルベツキ/音楽:坂本龍一/出演:レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディ)
ご贔屓のスタッフワークとディカプリオのアカデミー賞(R)主演男優賞受賞で歓喜! 人種差別を盛り込んだ復讐劇を最高のキャメラで捉えた2016年最高の映画体験。