ペーパーバードの画像
(C)2010 Vers til Cinema, Globomedia & Antena 3 Films. Exclusive Distributor: IMAGINA INTERNATIONAL SALES. All Rights Reserved
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モントリオール世界映画祭で観客賞を受賞した感動作。多くの芸術家たちを翻弄したスペイン内戦を背景に、家族を失った喜劇役者ホルヘが、劇団の相棒エンリケや孤児で10歳のミゲルと共に苦境を生きていく物語を描く。ホルヘを演じるのは、スペインの人気俳優イマノル・アリアス。エンリケにルイス・オマール、ミゲルに『永遠の子供たち』の天才子役ロジェール・プリンセプが扮する。監督は、代々続くサーカス・アーティストの家系に生まれたエミリオ・アラゴン。

主人公のホルヘは、エンリケが連れてきたミゲルに最初は辛く当たってしまう。恐らく、亡くした息子とミゲルが同じくらいの年だったため、情が移るのを恐れているのだろう。が、その態度は決して八つ当たりではなく「愛の鞭」。ホルヘ本人にそんなつもりはなくとも、傍から見ると父子そのものである。ミゲルはホルヘを慕い、ホルヘもそんなミゲルを実の息子のように大切に思うようになる。

ホルヘの劇団はフランコ政権下の監視下に置かれており、時折、総統が鑑賞しに来ることがある。しかし、戦争を憎むホルヘは、ステージで政府を批判する歌を歌うなど憎悪の念を隠さない。勿論、彼だけでない。劇団内では次第に反体制派の絆が強くなっていく。

基本的に、この劇団の行うショーは明るいもの重苦しさはなく、サーカス一家出身の監督らしさが反映されている。時折、温かな笑いを誘う演出もあり、何より無邪気なミゲルが可愛い。劇団内に送られたスパイのホルヘに対する思いなど、登場人物たちそれぞれの思いが交叉する描写もきめ細かい。

こういう映画には必ず用意されている「泣きどころ」もあり、ラストは涙なしで見られない。音楽も映像も美しく、「映画を観た」という満足感を得られる一本。 (池辺麻子)

ペーパーバード 幸せは翼にのって
8月13日(土)、銀座テアトルシネマ他にてロードショー
公式サイトhttp://www.alcine-terran.com/paperbird/