主人公のホルヘは、エンリケが連れてきたミゲルに最初は辛く当たってしまう。恐らく、亡くした息子とミゲルが同じくらいの年だったため、情が移るのを恐れているのだろう。が、その態度は決して八つ当たりではなく「愛の鞭」。ホルヘ本人にそんなつもりはなくとも、傍から見ると父子そのものである。ミゲルはホルヘを慕い、ホルヘもそんなミゲルを実の息子のように大切に思うようになる。
ホルヘの劇団はフランコ政権下の監視下に置かれており、時折、総統が鑑賞しに来ることがある。しかし、戦争を憎むホルヘは、ステージで政府を批判する歌を歌うなど憎悪の念を隠さない。勿論、彼だけでない。劇団内では次第に反体制派の絆が強くなっていく。
基本的に、この劇団の行うショーは明るいもの重苦しさはなく、サーカス一家出身の監督らしさが反映されている。時折、温かな笑いを誘う演出もあり、何より無邪気なミゲルが可愛い。劇団内に送られたスパイのホルヘに対する思いなど、登場人物たちそれぞれの思いが交叉する描写もきめ細かい。
こういう映画には必ず用意されている「泣きどころ」もあり、ラストは涙なしで見られない。音楽も映像も美しく、「映画を観た」という満足感を得られる一本。 (池辺麻子)
ペーパーバード 幸せは翼にのって
8月13日(土)、銀座テアトルシネマ他にてロードショー
公式サイトhttp://www.alcine-terran.com/paperbird/