『ヴィンセントが教えてくれたこと』映画レビュー

(C)2014 St. V Films 2013 LLC. All Rights Reserved.
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ちょい悪オヤジと ひ弱な小学生の年の差バリバリ・バディムービーに爆笑・感動!

公開直後、全米4館スタートから口コミで2500館に拡大したこと。ゴールデングローブ賞にノミネートされ『バードマン……』『グランド・ブダペスト・ホテル』と争ったこと。ご贔屓ビル・マーレイとナオミ・ワッツが共演となればこれはもう外せないと思っていた本作がいよいよ日本公開です。

ビル・マーレイは、既に存在自体に笑えますし、あの気品のある『ダイアナ』を演じたナオミ・ワッツがエレガンスの欠片もない妊婦ストリッパーを演じますが、以外に潔癖症で掃除・片付け物好きな嫌味のない「夜の女」役として笑わせてくれます。

ビル演ずるヴィンセントは、酒とギャンブルが大好きな、もう人生終っていそうな中年男。彼の隣りにシングルマザーのマギーと12才の小学生オリバーが引っ越してきます。ひょんなことからマギーの留守中にオリバーを預かることになったヴィンセント。

オリバーは、ミッション系の学校でいじめられますが、ヴィンセントなりの方法で逆襲方を伝授したり、暇な時間は競馬へ連れ出しオッズの計算を教えたり、行きつけのバーに出入りしたり、妊婦ストリッパーのダカと行動を共にしたりとひっちゃかめっちゃか。しかし、ある日ヴィンセントが介護施設に立ち寄り、認知症の妻を愛おしく見詰める姿を目の当たりにします。

日増しにオリバーはヴィンセントを慕い、二人の友情が芽生えていき……ラストは号泣必至です。

【ナオミ・ワッツが本作品によせたインタビューを一部掲載】

ヴィンセントと腐れ縁の仲である、妊娠中の娼婦ダカに扮したワッツは、図太く生きる女性をたくましく演じなくてはならない。その役作りには、数多くの女性へのリサーチが役立ったと言います。
「いろんな女性たちの声に耳を傾けた。彼女たちは、自分の理想の人生を持っていて、逃げ道を探しているの」と、「問題を抱えながら何とか生きている役」と評するダカへのアプローチを明かしつつ、「役作りは楽しかった」と笑顔を見せます。

ワッツとマーレイのユーモラスなかけ合いが本作の魅力のひとつですが、百戦錬磨のワッツをもってしても「ビルはコメディの天才だから、おじけづいていた」そうで、「ビルは脚本に書いていないことも、即興でやってのけるから、事前にキャラクターをしっかりと身につけたわ」と、入念に準備した上で撮影に挑んだと明かします。「ビルに助けを求めたこともあったわ。どうすればもっとうまくできるの?アイデアをちょうだい、助けてってね。彼は応えてくれた。とても親切なのよ」と個性派俳優との共演を楽しげに振り返りました。

ストーリーに関しては、「笑えて感動できるけれど、センチメンタル過ぎない」点が気に入っているのだといいます。さらに、「美しい物語だと思ったわ。ヴィンセントを中心としてさまざまな人々を描いているの。それぞれが問題を抱えていて、衝突し、影響し合い、そしてお互いを理解する。いら立つこともあるけれど許し合い、少しずつ譲り合う。その中心にヴィンセントがいる」とした上で、「純粋無垢な少年が、彼の本質を見抜くの。そしてヴィンセントをありのまま受け入れるだけでなく、自分を1番いい視点から見つめ直すことを教えるのよ」と本作に込められたテーマに感銘を受けたと語りました。
(中野 豊)

ヴィンセントが教えてくれたこと

■2014年 アメリカ映画/上映時間:102分/監督:セオドア・メルフィ/出演:ビル・マーレイ、ナオミ・ワッツ、メリッサ・マッカーシー、ジェイデン・リーベラー、クリス・オダウド、テレンス・ハワード

オフィシャルサイト:http://vincent.jp/