未曾有の災害によって日本映画の制作や公開が延期された2011年。その反動と表現者の宿命というバイアスがかかった2012年公開の邦画の充実ぶりに狂喜乱舞ものでした。が、筆者の極私的な感情によりベスト10から日本映画の選出を棄権した結果ヨーロッパ映画中心のテンに落ち着きました。2012年公開映画の豊作ぶりは10年に1度と言ってもいいのではないでしょうか。
10)マリリン 7日間の恋
エドガー、サッチャーの伝記映画も公開された2012年。映画ファンとしては外せないマリリン・モンローのたった7日間の伝記映画です。7日と言わずもっともっと見たかった。
9)バッド・ティーチャー
アメリカ式学園ドラマとして抜群の可笑しさ。なんもかも忘れて笑いました。キャメロン・ディアス最高!
8)クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち
女性の肉体美をアートで包み込んだ夢の世界のドキュメンタリー。
7)私が、生きる肌
歪曲した愛の姿を奇妙に残酷に描いたアルモドバルの奇作。
6)アルゴ
正統派アメリカ映画。これが実話だということに衝撃をもつと共にハリウッド映画作りの巧さを作品そのものと劇中映画としても堪能しました。
5)ミッドナイト・イン・パリ
混迷の現代人を甘美な時代への招待状というスタイルでみせる、ウディ・アレン監督久々の傑作。
4)おとなのけんか
子供の喧嘩に大人が介入すると「ことは更に大きくなる」。現代社会の価値観の違う二組の夫婦の対比を描く視点が抜群。『ゴーストライター』の翌年に観賞することができたウィットの効いた本作のロマン・ポランスキー監督に脱帽。
3)最強のふたり
絆・格差・介護など先進国の社会問題を1本の映画が提示しています。最強とは、力のことではなく、人間愛のことだと微笑みと共に描いた否のうちどころのない秀作。
2)アーティスト
モノクロ・サイレントのフランス映画が米アカデミー作品賞を受賞するなど誰が予想したでしょうか?光と影づかいの妙。映画がサイレントからトーキーへの移行期を描いていた点など古い映画ファンはいくつかの映画を想起するはず。本編のサイコーなところはミュージカルでエンディングを迎えたことです。
後味悪い。救いの無い映画をつくる監督でお馴染みのラース・フォン・トリアー監督が満を持して地球終末映画を見事な映像でつくり上げました。賛否分かれる作品でしょうが、私には壮大なファンタジー作品にみてとれました。人々が正常な精神状態ではいられない様は圧巻。(中野 豊)