『ブゴニア』解説・映画レビュー 絶妙なコントロールが混沌世界を描き切る

『ブゴニア』解説

『ブゴニア』とは


『哀れなるものたち』で観客を魅了したヨルゴス・ランティモス監督が、再び誰も見たことのない作品を生み出した。製作に『ミッドサマー』のアリ・アスターと『パラサイト 半地下の家族』製作チームが名を連ね、最強の布陣が、韓国の伝説的なカルト映画『地球を守れ!』(03)を、現代的なエンタメ作にパワーアップさせている。

本年度のアカデミー賞でも作品賞を含めた3部門にノミネート。第83回ゴールデン・グローブ賞 <作品賞>他 主要3部門ノミネートされ、作品賞(ミュージカル・コメディ部門)、主演女優賞(エマ・ストーン)、主演男優賞(ジェシー・プレモンス)。

『ブゴニア』のヨルゴス・ランティモス監督とは


ギリシャ、アテネ生まれ。アカデミー賞に6度ノミネートされた実績を誇る、世界中で高い評価を集めている映画監督・プロデューサー・脚本家。英国アカデミー賞、ゴールデングローブ賞、ベネチア国際映画祭の金獅子賞など、数々の賞に輝く。

『ブゴニア』のキャスト

ミシェル役を熱演するエマ・ストーンとヨルゴス・ランティモス監督のタッグは、本作で5度目。誘拐犯2人組を、「憐れみの3章」「シビル・ウォー アメリカ最後の日」のジェシー・プレモンスと、オーディションで抜てきされた新星エイダン・デルビスが演じる。サンディ役にアリシア・シルヴァーストーン。1995年『クルーレス』でブレイク。ヨルゴス・ランティモス監督作品では、『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』に出演している。

『ブゴニア』映画レビュー 絶妙なコントロールが混沌世界を描き切る


ヨルゴス・ランティモス監督といえば、完璧に作り上げた華麗な舞台に不穏さを投げ込む名手。作品は物騒だけど品がある。『ブゴニア』もそこは同じ。今回はアメリカの片田舎で起きる誘拐事件を描いている。重々しさはなく、軽いコメディタッチが心を弾ませてくれる。

スタートは、背景描写とともに誘拐の準備をしている二人組の会話がずっと続く。テディ(ジェシー・プレモンス)と、引きこもりの従弟ドン(エイダン・デルビス)の二人組だ。トップ製薬会社のCEOミシェル(エマ・ストーン)の誘拐を目論んでいる。それが成功したあとも、しばらくは会話劇が続く。今度はテディとミシェルの会話だ。多少の暴力は仕方ないとしても、その会話で繰り広げられる本気の真剣勝負度は凄まじい。

中盤以降、アクションも増え、ただならぬ気配や危険度が増してくる。一体何が起きているのか、二人の誘拐犯が目論んでいることは何なのかが明らかになっていき、物語の結末への流れのスリルはエスカレートしていく。

完璧な舞台と流れに加え、三人の登場人物の際立った人物像の描き方に抜群のキレがある。ヨルゴス・ランティモス監督のミューズであるエマ・ストーンの安定感は格別だし、テディ演じるのジェシー・プレモンスの新鮮で誠実な演技に心を打たれてしまった。

ヨルゴス・ランティモス監督のコントロール力が大いに発揮されている。題材は明らかにリメイク元の「地球を守れ」なのだけど、陰謀論的ピースがちりばめられている。

影の支配者の意図をミツバチの危機を描くことで表現しているのは陰謀論的初級。フラットアースを入れ込んでくるあたりに確信犯的な意図を感じてしまった。普通ならフラットアースなんて、ありえないレベルの話。でも陰謀論の中では、真面目に議論されている題材でもある。知っていた人なら、さりげなくぶち込む方式にニヤリとしてしまうところだ。

(オライカート昌子)

ブゴニア
2月13日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
監督:ヨルゴス・ランティモス『女王陛下のお気に入り』『憐れみの3章』 
脚本:ウィル・トレイシー『ザ・メニュー』
出演:エマ・ストーン『ラ・ラ・ランド』、ジェシー・プレモンス『シビル・ウォー アメリカ最後の日』、エイダン・デルビス
原題:Bugonia/2025年/アイルランド・イギリス・カナダ・韓国・アメリカ/カラー/ビスタサイズ/118分/字幕翻訳:松浦美奈/PG12
配給:ギャガ ユニバーサル映画   
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