(真実味のある西部がリアルな迫力を持つ王道的娯楽作

かつてはドル箱だったにしろ、勧善懲悪、決闘、孤独なガンマンといった古臭いイメージがあった西部劇(ウェスタン映画)が、新たなコンセプトで蘇り始めているのではないか。そんな思いを抱かせてくれるほど、最近のウェスタン映画は人間を描く上で面白いものが多い。

たとえば、ラッセル・クロウ、クリスチャン・ベイル主演で、息が詰まるような人間模様と葛藤を描いた『3時10分、決断のとき』。エド・ハリスが主演・監督をつとめたシンプルさが小気味よい『アパルーサの決闘』、ブラッド・ピットが伝説のアウトローを演じた人間ドラマ『ジェシー・ジェームズの暗殺』など、深い人間性を描いた珠玉の作品が生み出されつつある。そんな中で真打ちとも言うべき作品が、『トゥルー・グリット』なのである。

コーエン兄弟の作品といえば、どちらかというと隅々までコントロールの効いた小振りな完璧性や、奇妙な後味の残る作品が多いイメージがあったが、『ノーカントリー』以降、さらに本物の質感が加味され、迫力の奥行きが深くなった。『トゥルー・グリット』では、西部の今はすでにない空間や空を、スクリーンの外にはみ出すほどの迫力と現実感で描いている。

その真実味のある西部を旅するのは、父の敵に復讐を誓う14歳の少女ヘイリーと、彼女に金で雇われた保安官。そして仇の男を別件で追うテキサス・レンジャーの三人だ。

ストーリーはヘイリーの視点で描かれる。その点だけで見ても今までの西部劇とは趣が異なる。少女の視点を通す事で、わたしたち西部に不案内な観客も初めての西部の広大な世界に入り込んでいくような感覚を覚えさせられる。少女と二人の男と入り込んだ西部は、旅を続けるうちに妙に馴染み深い世界にも思えてくるから不思議だ。

『トゥルー・グリッド』は、西部の観光旅行的案内映画なだけでなく、同時に骨太な王道的娯楽大作でもある。残念ながら、10部門ノミネートされながらアカデミー賞では無感だったが、間違いのない必見作である。(オライカート昌子)

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