リメイク版『トータル・リコール』は豪華なSF超大作だ。2012年度版には火星は出てこないが、宇宙の旅より冴えたアイデアが、地球のコアを17分で突き抜けるいわゆる通勤列車、フォールだ。今までいろいろな映画で見てきた未来世界の描写のなかでも、フォールの面白さ、驚異のビジュアルは群を抜いている。
近未来の地球は化学戦争により二つの地域しか住めなくなっている。二つの地域は、支配側である富裕層が住むグレートブリテンと、貧困層の住むコロニーで、それぞれ地球の反対側にある。コロニーに住む労働者は、フォールに乗ってグレート・ブリテンまで仕事に行く。
それぞれの地域の景色も刺激に満ちている。『トータル・リコール』は秀逸なセットの自己主張がとても強い映画といっていいと思う。もちろん、フィリップ・K・ディックの原作を最大限に生かす意味で。
主役のコリン・ファレルが大作に主演するのはずいぶん久しぶりだ。ここ4.5年は、『クレイジー・ハート』や『モンスター上司』、『フライトナイト/恐怖の夜』、9月8日公開の『ウェイバック-脱出6500km-』など、助演的な役をたくさんこなして地力を蓄えてきたと言うべきか。
『トータル・リコール』でのコリン・ファレルは、ケイト・ベッキンセール、ジェシカ・ピールといったパワフルな女性陣に負けないチャーミングさと強い存在感で映画に厚みを与えている。
監督はレン・ワイズマン。監督作品『アンダーワールド』、『アンダーワールド:エボリューション』と同じく、『トータル・リコール』もテンポよく、エンタメ的センスと美的感性のバランスが引き立つ一作。
(オライカート昌子)
トータル・リコール
2012年8月10日(金)より丸の内ピカデリー他全国ロードショー!
オフィシャルサイト http://www.totalrecall.jp/