(C)2012 TWENTIETH CENTURY FOX
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私たちは誰でもどこか限定された生き方を送っている。いろいろな欲望もあるけれど、全てが叶えられるとは限らない。今ある自分で満足するか、ないものねだりを続けていくか、二つに一つだ。

今ある自分に満足しつつ、そんな自分を広げていく努力が大切なのだろう。『セッションズ』は、そういう生き方の軽やかさや爽やかさを描いた映画である。

主人公のマークは、子供の頃に小児マヒを患い、体を動かせないだけでなく、鉄の檻に入ってかろうじて呼吸できる状態で生きている。外に出ていく時は、決められた時間のみ使用可能な携帯用の呼吸器を持っていく。

大学を卒業し、ヘルパーの手を借りながら、一人暮らしをし、ジャーナリスト、詩人として生活をしている。神を信じ、神父に日常の細かなことを相談し、ヘルパーに恋もする。日々、不可能性に挑戦しているような状態だ。

あるとき、身体障害者の性問題を調べて書く仕事が舞い込む。引き受けたものの、問題は彼に性体験がないことだった。話を聞きに行くが、何の話をしているのか全く意味が分からない。

そこで彼はその道のプロ(セックス・セラピス)の手助けで、初めての性体験を試みることになる。彼女は娼婦ではないので、セッションは6回限り。その後会うことはないという条件だ。

『セッションズ』はその様子を暖かさとおかしさの絶妙のブレンドで描いている。実在したマークが書いた記事が元になっている。

彼は身体が動かないため、限定されていることが、普通の人より多い。だが、彼は人と自分を比べて嘆いて時間を無駄にすることなく、100パーセント自分を受け入れている。なかなかできないことだ。それをやり遂げたからこそ、彼は愛し愛され、周りに優しさと楽しさを広げていったのだろう。

私たちのほとんどは、彼ほど限定された生き方をする必要がないけれど、精神はどれほど限定されているんだろう。そのことを深刻さも説教臭さもなくそっと肩をたたくように伝えてくれる。『セッションズ』は本当に出会えてよかったと思える稀な作品なのだ。(オライカート昌子)

セッションズ
2012年 アメリカ映画/ドラマ・コメディ・恋愛/95分/原題:THE SESSIONS/監督:ベン・リューイン/出演・キャスト:ジョン・ホークス(マーク)、ヘレン・ハント(シェリル)、ムーン・ブラッドグッド(ヴェラ)、アニカ・マークス(アマンダ)、ウィリアム・H・メイシー(ブレンダン神父)ほか/配給:20世紀フォックス
2013年12月6日 シネマカリテほか全国順次ロードショー