日本では『アナザー・プラネット』も公開されていないし、女優、脚本家としてのブリット・マーリングはあまり知られていない存在だ。最近ではロバート・レッドフォードの『ランナウェイ/逃亡者』に出演していた。だが、『ザ・イースト』を見て、脚本家、女優としての才能のほとばしりに驚いてしまった。
『ザ・イースト』は、元FBIに所属していた女性サラが、民間企業の新たなプロジェクトの候補として面接を受けるところから始まる。委託を受けた企業を守るため潜入活動を行い、情報を探る会社だ。そこで見事仕事を得たサラは、『イースト』と名乗る環境テロのグループに潜入。その顛末をシャープにサスペンスフルに描く。
悪徳企業を懲らしめるために手段を厭わないイーストと、企業を守るために身分を隠して組織の一員として活動しなくてはならない立場を自ら選んでしまった主人公サラ。
環境問題や、企業倫理を描くテーマも個性的だし、スリルと娯楽性も上質。楽しめるだけでなく、彼女の心の葛藤、行く末に心を鷲掴みにされる。
イーストのリーダー、ベンジーを演じるのは、『メイジーの瞳』でも好演を見せるアレキサンダー・スカルスガルド。父は『マイティ・ソー』や『アベンジャーズ』でエリック博士を演じるステラン・スカルスガルド。息子のアレキサンダーは、193センチの長身と際立つ存在感で、カリスマぶりを発揮。『ザ・イースト』を華やかさで大いに盛り上げてくれる。イーストのメンバーの一員をエレン・ペイジが演じているのにも注目。
『ザ・イースト』には、見ている側の予想を大きく裏切る思いがけない二つの展開が待っている。一つはイーストのメンバーの素顔。そしてもう一つは、ラストのサラの決断である。
この決断に驚かない観客は少ないだろう。その決断の真っ当さに心が洗われる思いがする。残念ながらアカデミー賞などの賞レースでは、『ザ・イースト』は、名前が挙がらなかったけれど、ハリウッドおそるべし。見ごたえのある作品があふれているのだ。主演・脚本のブリット・マーリングは、間違いなく今後の映画界を牽引していくキーパーソンになっていくと思う。 (オライカート昌子)
ザ・イースト
2013年 アメリカ映画/サスペンス・アクション/116分/原題:THE EAST/監督: ザル・バトマングリッジ/出演・キャスト:ブリット・マーリング(サラ)、アレキサンダー・スカルスガルド(ベンジー)、エレン・ペイジ(イジー)、パトリシア・クラークソン(シャロン)、ジュリアリ・オーモンド、ビリー・マグヌッセンほか/配給:20世紀フォックス
TOHOシネマズ シャンテ/新宿シネマカリテほか全国ロードショー
『ザ・イースト』公式サイト http://www.foxmovies.jp/theeast/