『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』映画レビュー 天才を育てた天才の生き様

ゴッホは、生前に1枚しか絵を売ることができなかった、そんな彼が、世界的に評価され、有名な画家として認知されるためには、ゴッホの弟テオの妻ヨーの力が必要だった。ゴッホが世を去った半年後にテオは亡くなり、残されたヨーは、あらゆる手段を使ってゴッホを売り込んだ。

世界最高のバンド、ビートルズについても、同じことが言える。ブライアン・エプスタイン(ジェイコブ・フォーチュン=ロイド)がビートルズを見つけ、マネージャーとして敏腕を降るわなければ、ビートルズはエディンバラの歴史の中で埋もれていた可能性がある。

ブライアン・エプスタインはエディンバラで家具屋を営んでいた。店の片隅にレコードを置くことにした。レコードエリアは徐々に広がり、エプスタインはレコード販売力をどんどん伸ばしていった。仕入れるレコードのためにビートルズの演奏を聴きに行き、才能に驚かされた。

ビートルズと契約するときのブライアンの殺し文句は、「アメリカへ連れて行く」だった。売り込みのワードは「彼らはエルビスより売れる」だ。それは実現された。

最初はうまく行かない。若い四人組の服装を整えさせ、お辞儀の訓練から始めた。レーベル契約となると、今までレコードを一番売る男として良好な関係を築いていたレコード会社も見向きもしない。だから会うレーベルの数をこなす。だめでも絶対うまくいくと信じながら。

『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』で描かれるビートルズは、私が知っていると思っていたビートルズと違っていた。才能はある。若くて元気でいたずらな面と人懐こさが眩しい。彼らはブライアン・エプスタインを信頼し、時々文句も言いながら言うことを聞く。彼らのスターへの道のりは、まさしくブライアン・エプスタインあってのこと。

映画では、ビートルズの快進撃が一段落した後は、ブライアンの生活がメインとなる。原題は、ミダス王を表現した「MIDAS MAN」。公的世界の喜びと私的世界の苦悩が交錯し、複雑な思いを残す。

(オライカート昌子)

ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男
監督:ジョー・スティーヴンソン
出演:ジェイコブ・フォーチュン=ロイド、エミリー・ワトソン、エディ・マーサン
2024年/イギリス/英語/112分/スコープ/カラー/5.1ch/原題:MIDAS MAN/
日本語字幕:斉藤敦子 字幕監修:藤本国彦 配給:ロングライド PG12
©
︎STUDIO POW(EPSTEIN).LTD https://longride.jp/lineup/brian
9月26日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
配給:ロングライド 【宣伝】ポイント・セット 03-6264-3261 info@pointset.co.jp