SHAME-シェイムーの画像
(c)2011 New Amsterdam Film Limited, Channel Four Television Corporation and The British Film Institute.
セックス依存症の兄と恋愛依存症の妹が、再会を機に心と生活のバランスを崩していく物語を、新鋭スティーヴ・マックィーン(往年のスターとはもちろん別人)監督が描く。主人公である兄を、同監督の『ハンガー(原題)/Hunger』で注目されたマイケル・ファスベンダーが演じ、妹を『17歳の肖像』『わたしを離さないで』のキャリー・マリガンが演じる。

物凄く気分が落ちるが、観て損はない。何せ、兄も妹も登場した途端に孤独感全開。もう全身から不幸オーラが眩しいほど漂ってくるのだ。が、彼らは多くを語らない。兄はサラリーマンとして安定した生活を送っており、女性にも不自由していない。それなのに”恋愛”ができず、仕事を終えて帰宅するとアダルトサイトを見るかマスターベーションする毎日。

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(c)2011 New Amsterdam Film Limited, Channel Four Television Corporation and The British Film Institute.
妹は恋人と破局寸前らしく、リストカットを繰り返し、妻子持ちの男性にもすがるように体を許している。何が彼らをここに導いてしまったのか?背景は謎のまま、ただ「今」だけが綴られる。しかし彼らの苦しみは、痛みに耐えているかのようなその表情から十分すぎるほど伝わってくる。

妹の出現で、兄のイライラは頂点に達する。2人は合わせ鏡のようで、妹はまさに兄の弱点を具現化した存在、生々しい現実だ。必死でプライドを保とうとする兄は、その後彼なりに努力はするものの、失敗。ついに妹を自分の目の前から排除してしまう。

終盤、瀬戸際で彼は自分の過ちにようやく気づくが、何とも思わせぶりなラストシーンで物語は幕を閉じる。都会人の心の病を芸術に昇華させたマックィーン監督と、ファスベンダー&マリガンの熱演は衝撃的。グレン・グールドの奏でるゴールドベルグの存在感も大きく、心の奥に深く入ってくる。 (余談)ファスベンダーの額の大きさにもビックリした(笑)。
(池辺 麻子)

SHAME -シェイム-
2011年 イギリス映画/101分/監督:スティーヴ・マックイーン/出演:マイケル・ファスベンダー、キャリー・マリガンほか/R18+/配給:ギャガ・コミュニケーションズ
公式サイト http://shame.gaga.ne.jp/
 2012年3月10日シネクイント、シネマスクエアとうきゅう他全国順次ロードショー