テンペストの画像
(c)2010 Touchstone Pictures
『タイタス』『フリーダ』『アクロス・ザ・ユニバース』などで独特の映像美を放ってきたジュリー・テイモア監督の最新作。原作では男性のミラノ大公プロスペローを女性に置き換え、斬新に描いたファンタジーだ。主人公のプロスペラを演じるヘレン・ミレンをはじめ、豪華キャストにも注目したい。

テイモアは、いつも私の興味の対象を映画にしてくれる人だ。学生時代、シェイクスピアが好きで専攻していた私には、彼女が『タイタス』以来、再びシェイクスピアとコラボしてくれたことが本当に嬉しい。舞台演出の腕が冴えるテイモアはやっぱり古典戯曲を大胆に解釈した演出がうまいと思う。

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(c)2010 Touchstone Pictures
物語は、ナポリ王アロンゾーとミラノ大公アントーニオが嵐で絶海の孤島に漂着するところから始まる。実はこの嵐、かつて弟アントーニオに大公の座を追われ、この孤島に住みついたプロスペラの魔術によって引き起こされたもの。プロスペラは魔女のような人物。

彼女の家来は、醜い怪物キャリバンと、変幻自在の空気の精エアリエル。魔法シーンや超現実シーンは、舞台では実現できない映像美が炸裂、テイモア監督の真骨頂だ。ベン・ウィショー演じる両性具有的なエアリエルは、体の大小を変え、空気に混じりながら、虫や鳥、数匹もの蛙に姿を変える。

全編の90%以上が森の中で、彼の一挙一動がこれ以上ないほど幻想的に表現されている。ベン・ウィショーとはスケジュールの関係で他のキャストと一緒に撮影が出来ず、別撮になったとのこと。それが結果的に合成シーンとなり、テイモアらしい華やかなコラージュ映像を効果的に見せている。

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(c)2010 Touchstone Pictures
父親アロンゾーと生き別れてしまった王子ファーディナンドは、それまで母親以外の人間を見たことがなかったプロスペラの娘ミランダと恋に落ちる。アロンゾー一行は息子を探し、怪物キャリバンは王の道化師や酒蔵係と意気投合し、同じ森の中でそれぞれの物語が同時進行する。

シェイクスピア最後の戯曲である本作は、お得意の大団円→ハッピーエンドで幕を閉じる。復讐をテーマにしつつ、彼の作品の集大成とも言える人間の愚かさや美しさが凝縮された作品だ。

『恋に落ちたシェイクスピア』などで3度のアカデミー賞に輝くサンディ・パウエルの衣装も素晴らしい(本作で8度目のアカデミー賞ノミネート)。華やかなショーを観た後のような興奮を味わうならこれ以上の作品はない。『プロスペローの本』(1991年/ピーター・グリーナウェイ監督)も絵画的美しさが印象的な作品。こちらと併せて観るのもおススメ。 (池辺麻子

・2010年 アメリカ映画/112分/監督:ジュリー・テイモア/ヘレン・ミレン、ラッセル・ブランド、リーヴ・カーニー、トム・コンティ、クリス・クーパー、アラン・カミングほか、
『テンペスト』オフィシャルサイト
・6月11日(土)、TOHOシネマズシャンテ、新宿武蔵野館他にて全国順次ロードショー

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