グリム童話で有名なラプンツェルがディズニーのプリンセスとして戻ってきた。『塔の上のラプンツェル』がユニークな点は、3D映像が特別に美しいだけでない。おしとやかで優しくて柔和な古典的プリンセスとはちょっと違うところが現代の私たちに親近感をもたらす。

現代的プリンセスのラプンツェルは、なかなか親(実は本当の親ではない魔女)に頭が上がらない。夢があって、どうしても塔から出たいと思っているのだが、簡単に言いくるめられてしまう。物心ついてから、一度も塔の外に出たことがない、文字通りの世間知らずだから仕方ないことかもしれない。

いったん外に出ても、喜びだけではなく、親の言いつけに背いたことに後悔する気持ちがラプンツェルを葛藤させる。そのシーンの表現が面白いことこの上ない。

『塔の上のラプンツェル』は親子関係という、現代的で複雑なテーマを歌に乗せて楽しくさらりと描いている。魔女はどこまでも利己的だが、現代でも親はある程度は利己的だ。子供が自分の世界を発見していくのをどう見守るか、その道のりを応援できるのか。魔女には無理な事かもしれないが、親なら誰でもいつかは突きつけられる問いである。

ラプンツェルも親の庇護を脱する代わりに、旅の道連れの庇護を必要としてしまう。まだ自分を発見することができないからだ。旅の道連れの王国一の盗賊、フリン・ライダーは、みなしごとして産まれ、頼れるものは自分だけという生き方をしてきた無法者だ。2人が出会ったことで成長し、他者を発見すると同時に自分を見出していくプロセスが楽しく描かれる。

さすがディズニークラシック50作記念作品だけのことはある力作だ。かなり改作しているが、グリム童話ラプンツェルのお約束的なシーンはきちんと残しているところも嬉しい。