『レッド・ドーン』映画レビュー

熱い青年たちの戦いにグッときた。戦争系ソリッド・シチュエーションか

おもしろい映画、楽しい映画、ほめたくなる映画はたくさんあるけれど、グッとくる映画はそれほどない。感動をいつまでも心にとどめておきたいような。『レッド・ドーン』は、アメリカが北朝鮮に占領されるという映画である。見終わったときにこんなに余韻に浸れるとは全く思ってもみなかった。

ところで、この映画は北朝鮮の軍事力を中心に描いているわけではなく、占領された側がどのように戦い、状況に対応するのかが、メインのストーリーである。ソリッド・シチュエーションの戦争バージョン的に見てもいいかもしれない。

平穏な生活が突如崩れ、少年たちは森に潜んでレジスタンスに身を投じる。戦いを通して、家族、成長、自己犠牲が描かれる。ケレン味のない直線的でシンプルな作りが特徴で、登場人物一人一人がそれぞれのテーマを持ち、必然的に変化していくところに、ぎゅっとつまった物語性を感じた。

最後まで緊張感が持続し、ラストには晴れやかな感動が残る。見れば元気が出る映画の一つだと言えそうだ。ただ、次にこの人が犠牲になりそうだと思ったところで、そのとおりになってしまうところは、少々もったいない感じがした。

戦争を礼賛していると思って、嫌うひともいるかもしれない。どうして北朝鮮がそんなに強いの？と思う人もいるだろう。実は、この映画は、冷戦時代まっただ中に製作された『若き勇者たち』（1984）のリメイクで、オリジナルではキューバ、ソ連、ニカラグアの共産党連合が攻めてくることになっていた。本作も当初は、中国が攻めてくることになっていたらしいが、諸事情で北朝鮮に変更された説がある。

主演のジェッド役は、『マイティ・ソー』のクリス・ヘムズワース。ジェッドと仲が悪い弟マットは、ジョシュ・ペックが演じている。かつてスカパーで放映されていたニコロデオンチャンネルのなかの『ドレイク＆ジョシュ』という番組で太っちょのジョシュを演じていた、元子役スターだ。

『ザ・スーラ』、『テラビシアにかける橋』のジョシュ・ハッチャーソンも出演しているし、さながらかつての子役大集合的な作品になっているのもみどころのひとつ。

オリジナル版では、パトリック・スウェイジ、C・トーマス・ハウエル、チャーリー・シーン 、ジェニファー・グレイが、作品の成功を受けてスターの座を手にした。果たしてレッド・ドーンの若手陣の未来はどのように拓けていくのか、注目したい。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（オライカート昌子）
レッド・ドーン
2012年　アメリカ映画／アクション・戦争・青春／96分／原題：RED DAWN／監督： ダン・ブラッドリー／出演・キャスト：クリス・ヘムズワース（ジェッド・エッカート）、ジョシュ・ペック（マット・エッカート）、ジョシュ・ハッチャーソン、エイドリアンヌ・パリッキ、 イザベル・ルーカス、コナー・クルーズ、ジェフリー・ディーン・モーガンほか／配給：クロック・ワークス
10月5日（土）新宿バルト9ほか全国ロードショー
『レッド・ドーン』公式サイト　http://reddawn-film.com/