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『ショーン・オブ・ザ・デッド』や『ゾンビランド』、『28日後』など、ゾンビジャンルの映画には数々の良作が存在する。その中に『ウォーム・ボディーズ』が新たに仲間入りしたと思う。

簡単に『ウォーム・ボディーズ』のあらすじを紹介すると、ゾンビだらけの空港をさまよい歩く一人のゾンビ青年”R”が主人公。自分の名前も(確かRで始まるはず)、何をしてきたのかも、家族のことも、なにも覚えていない。けれど、かすかな思考はあるし、言葉らしきものをうなりながら発することもできる。

そんな彼が人間を襲い、脳を食べたせいで、頭脳に被害者の記憶がインストールされてしまう。人間の記憶ほど甘美なものはこの世にはないらしい。

気づくと目の前に(被害者の)恋人の顔がある。記憶の鮮明さに驚いてゾンビの彼は、思わず彼女を食べずに救う。そこから前代未聞の、ロミオとジュリエットばりのゾンビと人間の恋愛がスタートする。

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かといってナイーブでデリケートなだけのラブストーリーになるはずもない。血潮や内蔵が飛び出る、いわゆるゾンビ節は健在だし、地球滅亡ジャンルの救いのなさも描かれる。ゾンビのなれの果てが闊歩して、恐ろしげな姿で襲いかかってくるのだ。

『ウォーム・ボディーズ』の魅力は、ゾンビと人間の恋愛という新たなゾンビワールドを創造しつつ、アクション映画など、様々なジャンルが心地よいレベルで融合されているところにある。

特に音楽の使い方がいい。昔、何百回と聞いたジョン・ウェイトの曲『ミッシング・ユー』が使われているところが、なにより嬉しかったし、ブルース・スプリングスティーンのヒット曲『ハングリーハート』は、効果的に使われているので、今も耳から離れない。

ゾンビだって貪りたい欲望以上に、心にぽっかり空いた穴を埋めたい欲求もあるのだろう。人間がそうであるのと同様に。

ウォーム・ボディーズは、新感覚のデートムービーとして強くお勧めしたい。ゾンビ映画も吸血鬼映画も、ホラーの枠を超えて、どんどん新たな試みが生まれているようでワクワクしてくる。そのうちアカデミー賞でもゾンビ部門ができるかも? 
                        (オライカート昌子)

ウォーム・ボディーズ 
9月21日(土)シネクイント他全国ロードショー
公式サイト http://dead-but-cute.asmik-ace.co.jp/