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2008年カンヌ映画祭での審査員賞受賞作『イル・ディーヴォ』で注目されたイタリア映画の鬼才パオロ・ソレンティーノ監督が、ショーン・ペンを主演に起用した話題作。かつての栄光が衰退し、引きこもりとなったロックスターが、亡き父親の遺志を継いでナチの残党を探すロードムービー。他のキャストは『ファーゴ』のアカデミー賞女優・フランシス・マクドーマンド、ジャド・ハーシュら名優たちが揃い、音楽を手がけたデイヴィッド・バーンが本人役で出演もしている。

ナチスが絡んでいるが、特に政治的色が意識した映画ではなく、また、暗いわけでもない。むしろ、どこを取っても絵になる色鮮やかな映像、音楽のセレクト、所々に転がるユーモアなど綿密に計算された完璧な演出に驚かされる。ペン演じるシャイアンという男は、ボサボサ頭で顔に化粧を施し、もにゃもにゃと生気のない喋り方をする変わり者だ。道行く人は明らかに怪訝そうな目で彼を見るが、シャイアンには友人がいるし(多くはないが)、旅の途中でも様々な人と出会い、話をする。彼の口から出る言葉がちょっと面白く印象的なので、「シャイアン名言集」を作ってみたくなる。

音楽はかなり拘っていて、元トーキング・ヘッズのデイヴィッド・バーン他、ボニー・プリンス・ビリーのウィル・オールダムが手がけている(個人的にはよく知らず…)。かなりマニア向けなので一般的な娯楽作品の感覚では観られないが、かと言って楽しめないものでは決してないし、好きな人には宝探しのような映画になるだろう。

(池辺麻子

きっとここが帰る場所
監督・脚本:パオロ・ソレンティーノ
音楽:デイヴィッド・バーン/ウィル・オールダム
出演:ショーン・ペン/フランシス・マクドーマンド/ジャド・ハーシュ/イヴ・ヒューソン/ケリー・コンドン/ハリー・ディーン・スタントン/ジョイス・ヴァン・パタン/デイヴィッド・バーン

2011年/イタリア=フランス=アイルランド合作/カラー/119分/スコープサイズ/35mmドルビーデジタル、HD/原題:THIS MUST BE THE PLACE/
6月30日(土)、
ヒューマントラストシネマ有楽町、シネマライズ他全国ロードショー