『mid90s ミッドナインティーズ』映画レビュー

ジョナ・ヒルはお気に入りの俳優だ。彼の出世作、『スーパーバッド 童貞ウォーズ 』が、とても面白い映画だったから。

面白い映画を見ると、出演者にも興味がでて、続けて見たくなるってことってあるでしょ。

ジョナ・ヒルは、太っちょのオタク、だけどしゃべりが得意という役どころをよく演じている。

『マネーボール』や『ウルフ・オブ・ウォールストリート』などのシリアスな役では、全く違う趣を見せてくれる。才人だ。

その才人、ジョナ・ヒルが自らの思い出をもとに、フレッシュで心に残る作品を作った。

自分が少年時代を過ごした、90年代。わたしにはちょっと前に思えるけれど、スマホもなければ、パソコンも家庭に入り込んでこなかった時代。

日本ではスマップやモーニング娘が全盛だったし、映画『トイストーリー』が公開されたけれど、それまでは、フルCG映画なんて存在しなかった。

そんな時代、少年たちは何をしていたんだろう。

イケてる若者たちは、スケボーをやり、パーティ三昧。

普通の少年たちは、音楽やゲームに夢中(そのあたりは今も変わりないかもしれないけれど)


『mid90s ミッドナインティーズ』の主人公は、13歳の少年、スティーヴィー。母と兄とロサンゼルスに暮らしている。イケてない部類だ。

激しい兄弟喧嘩のシーンが最初のシーンだ。

自分の知らない年上の世界に興味津々のスティーヴィーは、兄の部屋に黙って入り込んでは、気づかれ殴られている。

外ては、スケボーが妙に上手い不良がかった少年グループをチラチラ観察する。強い憧れの気持ちが募り、ある日、勇気を持って、彼らの中の一人に話しかけた。

『mid90s ミッドナインティーズ』は、ごくシンプルにスタートするけれど、壮大でミステリアスな大作映画に引けを取らないぐらい、展開が気になって、大きな期待感でワクワクさせられた。

スティーヴィーは、仲間に入ることができるのだろうか。

新しい関係は、彼に何をもたらすのだろう。
その世界に馴染めるのだろうか? ストーリーの最後には、何が待っているのだろうか。

映画のラストへの期待は、素晴らしい形で報われる。

そうきたか。ってね。涙ぐんだぐらいだ。

一人の人間の成長の描き方も、お手本にしたいぐらい的を得た表現で気分を良くさせてくれる。

成長により、人を知り、自分を知る。あらゆる関係が変化していく。水が流れるようにスムーズに。

やっぱり、ジョナ・ヒルはただものではない。こういう風に成長し、挑戦してきたんだね、って『mid90s ミッドナインティーズ』は、納得の映画なのだ。

オライカート昌子

mid90s ミッドナインティーズ

監督・脚本:ジョナ・ヒル『ウルフ・オブ・ウォールストリート』『マネーボール』(出演)
製作総指揮:スコット・ロバートソン『レヴェナント:蘇りし者』、アレックスG・スコット『レディ・バード』
製作:イーライ・ブッシュ『レディ・バード』 
音楽:トレント・レズナー、アッティカス・ロス
キャスト:サニー・スリッチ『ルイスと不思議の時計』『聖なる鹿殺し』、キャサリン・ウォーターストン『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』、ルーカス・ヘッジズ『ある少年の告白』『ベン・イズ・バック』、ナケル・スミス

2018年 / アメリカ / 英語 / 85分 / スタンダード / カラー / 5.1ch / PG12 
日本語字幕:岩辺いずみ/提供:トランスフォーマー、Filmarks
配給:トランスフォーマー © 2018 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.  
公式HP:http://www.transformer.co.jp/m/mid90s/  
Twitter&インスタ:@mid90s_JP 
9/4(金)新宿ピカデリー、渋谷ホワイトシネクイント、グランドシネマサンシャイン
ほか全国ロードショー