『世宗大王 星を追う者たち』映画レビュー

『世宗大王 星を追う者たち』は、二人のおじさんの友情物語だ。

おじさんと言っても、一人は韓国随一の名君といわれた世宗大王。
もう一人は、奴婢出身の天才科学者チャン・ヨンシル。

伝説の男たちだ。当時の朝鮮王朝時代を一変させた。

彼らがなぜ、伝説になったのか。何を考え、何をしてきたのか。

とても興味がひかれるところじゃないだろうか?

ホ・ジノ監督は、乏しい歴史書の記述を膨らませ、二人の友情を、星へのあこがれや興味という点で結び付けた。

二人が屋根の上に寝そべって、星を眺めるシーン。大王の寝室の障子に穴をあけ、星空に見立てるところなど、ロマンあふれるホッとする場面となっている。

だが、歴史は残酷だ。

李氏朝鮮が、中国明王朝の支配下にあって、軍事的には歯が立たない状況でもあった。

チャン・ヨンシルが大王のために発明した水時計や「天体観測機器」も、明からの攻撃の矢面に立つのを恐れた臣下たちにより、破壊されてしまう。

大王も、どうすることもできない。

そんなとき、大きな事件が起きてしまう。チャン・ヨンシルが製作の責任者だった輿が、大王を載せたまま、大破してしまうのだ。

ロマンと残酷、友情の三つの要素が組み合わせが、独特な余韻を生み出している。

ところで、世宗大王とチャン・ヨンシルを演じる二人のおじさん俳優がいいんだよね。

世宗大王を演じるのは、ハン・ソッキュ。チャン・ヨンシルを演じるのは、チェ・ミンシク。

ハン・ソッキュは、55歳、チェ・ミンシクは、58歳。1999年に公開され、社会現象を巻き起こした『シュリ』以来の共演になる。

二人とも、たくさんの代表作を生み出し、実力派俳優として地位を築いてきた。

今回、ホ・ジノ監督は、二人で話し合って、世宗大王とチャン・ヨンシルの好きな役の方を選んで、と、二人の俳優に配役を任せたらしい。

ハン・ソッキュ演じる世宗大王は、上品な趣の中に、情熱が染み渡る演技を見せてくれているし、チェ・ミンシクのチャン・ヨンシルは、大王に対する熱い信頼とともに豪放な胆力が際立っている。

もし、役を交換していたらどうなっていただろうか。豪放な雰囲気の名君と、奴婢出身ながら、上品な天才科学者。それもまた刺激的な作品になりそうだ。

ところで、世宗大王とチャン・ヨンシルの二人が伝説となった理由。

民のために暦を変え、文字を発明し、結果として世界を変えていく世宗大王。大王を自分の持てる技術で支えるチャン・ヨンシル。

苦闘も必要だったし、犠牲も必要だった。そんな中でも、二人は、できる限りのことを成し遂げた。
その心意気こそが歴史に残った理由ではないだろうか

二人への愛情と、尊敬が伝わってくる作品だ。

オライカート昌子

世宗大王 星を追う者たち
:© 2020 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.
천문:하늘에 묻는다 / Forbidden Dream 2019年 韓国 133分
監督:ホ・ジノ
出演:ハン・ソッキュ、チェ・ミンシク、シン・グ、キム・ホンパ、ホ・ジュノ、キム・テウ
配給:ハーク
ジャンル:ドラマ/時代劇
公式サイト:http://hark3.com/sejong/